My First Kissゴーストプリンセスのひと騒動から解放された日の夜。イデアはタキシード姿のまま、とある寮の地を踏みしめていた。
さく、さく、と乾いた砂を踏みしめる音が微かに響く。
イエローベースのこの場所は、自分には馴染まない。すっかり暗くなったあたりを見渡し、自傷気味な笑みをたたえそのまま足を進める。
消灯時間もとっくに過ぎた深夜。最低限の灯りしかついていない談話室を通り過ぎ、宿舎の奥の奥へ。
迷うことなくたどり着いたのは、他の扉とは違う重厚な扉。以前教えてもらった解除魔法を小声で唱えれば、カシャリと鍵が外れる音。
そのままそううっと扉を開け、中に身体を滑らせる。身体が薄いおかげでわずかな隙間で中に入ることができた。ありがとう薄い身体。こんなことで役に立つ日がこようとは。
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