桂花 珍しい物を貰った、と差し出された瓶には白い物を纏った濃いオレンジの小さな塊が幾つも入っていた。
何だろうと思いながら開けてみると、懐かしい芳香が鼻先をくすぐる。この香りは…。
「……金木犀?」
「なんだ、知っていたのか」
少々残念そうに言いながらオルテガが俺の隣に座る。どうやら瓶の中身は金木犀の砂糖漬けのようだ。
「遥か東国にある珍しい花だそうだな」
オルテガの口振からするに、この国には金木犀は生えていないらしい。くん、と香りを確かめるとやはり懐かしい香りがする。
「食べ物なのか?」
甘い芳香が特徴的な花ではあるが、食べ物として認識するのは初めてだ。スミレの砂糖漬けがあるくらいなんだからあってもおかしくないか。
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