もう自由登校が始まろうかという冬の深まるある日、ランス・クラウンはワース・マドルの正面の席に座った。図書館で近くに座ることはある。けれど多くは横隣であり、こうして顔を付き合わせるのは随分久々に感じたのだった。真剣な顔で名前を呼んだ。
「お前、就職先は決まっているのか」
「…ああ」
「魔法局か?どこの部署になる」
ワースは困ったように眉を寄せた。少しだけ口を開いて、その様は間違いなく躊躇っていた。数秒、待つ。けれど引き結ばれた口から詳細は語られることはなく、その視線を隠すサングラスに触れると笑った。
「まァ、ちょっと特殊な職なんだわ。詳しいことは言えねェけど餓鬼に心配されるようなことは何もねェよ」
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