「先輩、新木場さん。――そこまでです」
鋭い静止の声が、探偵社の静寂を裂いた。
目の前の書類、その次の項を記入しようとしていた手を、ぴたりと止める。
「もう、そんなに経ちますか」
新木場さんがしみじみと呟いた。読み込んでいた文献を閉じ、立ち上がる。
自分は品川君を見る。彼は強い意志を秘めた顔で大きく頷き。
「昼休憩の時間です」
きっぱりとした声で、そう告げた。
◆◆◆
「いやはや、いつも申し訳ない」
「お手数おかけします」
「どういたしましてー」
凝り固まった体を伸ばしつつ、3人で給湯室に移動する。
探偵社の昼休憩は、いつも品川君の一声で始まる。
自分や新木場さんは仕事に没頭してつい時間を忘れてしまうからだ。
給湯室の壁掛け時計を見る。現在時刻、12時40分。
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