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    ピュウ

    @pyuw_hiyuw

    Pixivから移転させた投稿物とか、一次創作とか二次創作とか。
    Twitter:@pyuw_hiyuw
    Bluesky:https://bsky.app/profile/pyuwhiyuw.bsky.social
    一次創作用の個人サイト:https://pyuwhiyuw.wixsite.com/reidobase

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    ピュウ

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    前半真上視点、後半海動視点のSSです。2019年頃のもの。

    #マジンカイザーSKL
    mazinkaiserSkl
    #海動剣
    kineticSword
    #真上遼
    trueKhitan
    ##二次創作
    ##移転作品

    誰が彼らを二人にするのか 悪魔がまた、人間を唆している。
     真上はハンドモバイルから視線を外し、隊員達に檄を飛ばす相棒の背を見た。その先には、これからカーゴに乗り込む6名が整列している。20メートル程距離があり、何を言っているのかは所々聞き取れない。
     本来ならば、海動と同じくデスカプリース隊を率いる真上もこれから任務へ向かう隊員達に何か言うべきなのだろうが、生憎全くと言っていいほど興味がなかった。こういうことは専ら海動の仕事になっている。
     かつて東京地獄砂漠で海動剣と出逢った時、WSOが介入する規模にまで新宿一帯の紛争は激化していた。その火種も規模もあの男無しでは有り得ないことだった。後に分かったことだが、海動はそれまで敵として戦っていた無頼者集団を一声でまとめ上げると、戦意の矛先を別の勢力へ向けさせ、商人や無法者達を次々と戦いに巻き込んでいったらしい。
     本人はその時軽く機転を利かせただけのように語っていたが、それは誰にでも出来る芸当ではない。あの男には、戦いに熱狂した者達の心を束ねるカリスマ性が宿っていた。
     6名の隊員が、海動の声に応じて一斉に吼えた。地響きを伴うそれに、真上は眉間に皺を寄せる。猿が1匹いるだけでも煩いのだ。数が増えれば余計に煩い。
     デスカプリース隊への配属は限りなく遠くない死を意味する。この曰く付きの部隊にその都度送られてくる数人の人間に対して、真上は憐れみなど感じなかった。恐らく、彼らもこれまでの例に漏れず、帰る頃には死んでいるだろうが、知ったことではない。戦いについて来られなかった、それだけだ。
     そろそろ話も終わる頃だろう、と真上は海動たちのいる方へ歩き出す。
     隊員たちの闘志を十分に奮い立たせた海動が、くるりとこちらを向く。そして、隊員たちには見えない角度で不敵な笑みを浮かべたのを、真上は見逃さなかった。
     ああ、またこいつは隊員達を殺すつもりだ、と直感した。
     海動剣は戦いに狂った集団を率いるカリスマであっても、全員を生き抜かせる英雄には及ばない。隊を率いる2人の目的は至上の戦いと勝利を得ることであり、全員で帰ることなど二の次だ。より熱い戦いの炎を呼ぶ為ならば、海動は隊員たちをも焼き尽くしてしまえる。
     もっとも、デスカプリース隊が派遣される戦闘区域は特に苛烈な戦いが行われており、死傷者を出さないことは不可能に近い。だが、これまで悪のカリスマに導かれて身を焼いた者も、少なくはなかっただろう。
     まるで魔神の力を借りたかのように、戦いの中で人を心地よく狂わせてしまうのだ、この男は。
     ふと、海動と目が合った。
    「ンだよ」
    「……いや」
    「何笑ってんだ」
     笑ってない。真上は答えずに、並んだ隊員達を一瞥した。

     ***

     デスカプリース隊が2人ではなく隊の形を成している時、真上の機嫌が悪いのはいつものことだった。
     海動も元々一匹狼が性に合っているので気持ちは分かるが、真上は特に集団で群れるのを嫌う。戦闘中に適宜指示を飛ばしはするものの、それ以外の隊長らしい振る舞いや隊員との接触は好まない。だから真上は今日もカーゴに乗り込むまでの間、少し離れた位置から隊員達を睨んでいる。
     こうなることを分かっててココに入ったんじゃねぇのかよ、オメーは。
     背に視線が刺さるのを感じて海動は口を尖らせた。今振り向いて睨み返しても、我関せずといったところだろう。
     まあ俺の方がまだ向いてるからいいけどよ、とひとりごちて刺さる視線を振り払うと、海動は改めて隊員達を怒鳴る。
     海動と真上率いるデスカプリース隊は、戦地へ赴く度に隊員が全滅して戻ってくるとWSO内でも有名だ。ここに配属される者は組織内でも特に戦闘欲を持て余したはぐれ者が殆どで、士気を上げるまでも無さそうだが、この全滅するジンクスの存在と現場の苛烈さが隊員の心を呑み込んでしまうこともある。海動は激しい戦いさえ味わえれば良かった上、戦場は食うか食われるかの場所だと理解している。だが、毎回命を落とす隊員達に対して思うところが無かったわけでもない。デスカプリース隊で生きて帰って来られるのは、戦いを渇望する炎を消さなかった者だけだ。それがお前達にもあるのか。
     海動の言葉に隊員達は目をぎらぎらと滾らせ、雄叫びを上げる。その様子を見た海動自身も呼応するように気分が高揚し、戦いを求めて熱が体を這い回る心地がした。
     振り返ると、真上がこちらに歩いてきていた。
     隊員達に何か言うためではない。カーゴの搭乗口がこちらにあるからだ。
     やはり不機嫌そうだと思いきや、海動が視線を合わせた時真上は笑っていた。といっても、他人がまず気づかないであろう僅かな笑みであったが、何故か真上は機嫌を持ち直している。不気味だ。
    「ンだよ」
    「……いや」
    「何笑ってんだ」
     真上は隊員達を一瞥すると、一人で先にカーゴへ乗り込んでいった。
     僅かに隊員達に向けられた視線は一転ひどく凍てついたもので、興味がないことを隠そうともしない。いや、興味がないどころか。
    「また気に入らねぇのかよ」
     聞こえないことをわかっていながらも、そうこぼさずにはいられなかった。
     海動はどうも、全滅するジンクスとやらを引き込んでいるのは真上のような気がしている。根拠など無い。真上が隊員達をそのように煽ったことも勿論今まで一度も無い。ジンクスだって海動も真に受けているわけではない。結果としていつも全滅しているだけだ。
     しかし、真上が気に入らない以上、隊員達は戦場から戻って来られない。
     靴紐が切れるだとか、黒猫が横切るだとかと同じで、あの男が出発前にああしているのは縁起が悪い。そんな気がした。
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