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    虚無虚無プリン

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    虚無虚無プリン

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    何が分かるんだ 自分の首に手を掛けてみる。
     喉仏を押すとぐっと詰まるような感覚がして、希死念慮と畏れが鬩ぎ合う。ここを押したって死にはしない。こんなやわい刺激じゃ死にはしない。気道を押さえて、きゅっと息が詰まる感触が心地良い。首を吊って死ぬ時はもっと痛いんだろうな、なんて思って、手を離す。死にはしないし自分を傷つけもしないけれど、死にちょっと歩み寄ってみたくてたまにこうして軽く喉を絞める。今日の観音坂独歩は死んだ。半ば自慰のような行為だ。
     明日が来なければ良い。
     明日働けば明後日は休日だよだとか、今日はダメでも明日があるよとか、そんなこと言われたって明日を乗り切れる気がしないから明日が来なければ良いと言っているんだ。また明日朝起きたら気怠い頭と身体を引き摺って身支度をして、ゴミみたいに人がいる朝のシンジュクの通勤ラッシュを抜けなければいけない。会社に着いたら着いたでハゲ課長の加齢臭と近くのデスクのクソ女のくせえ香水と嫌味とクソみてえな炎天下の中の営業とアラサーの目に厳しいパソコン作業に追われるんだ。帰宅ラッシュに揉まれないのはいいけど、それはつまりイコールで残業ってことで。帰ってもメシは作らなきゃならない、掃除洗濯炊事、俺の生活は全部自分の肩にかかってる。なんで俺がこんなクソみてえな社会にすり減らされなきゃいけねえんだ。ああ、一生朝なんて来なければいい。
     明日世界が終わるならどうする? なんて今聞かれたら、仮定じゃなくてマジで世界が終わる時にしか聞くなとか言いそうだ。最期まで君と同じなんて言う大事な人もいないし、やりたいこともない。強いて言えば定時で上がって自分の家でゆっくり寛いで、ぐっすり朝まで眠って死にたい。俺が寝ている合間にさくっと世界全部終わらせて欲しい。苦しみも悲しみも執着も恐怖も、余計な感情を感じる暇なんてないように。
     こんなクソみてえな社会のために俺だけ死ぬなんて馬鹿げている。破壊衝動と希死念慮が混ざり合う。明日が来なければいいから会社が爆発しろ。明日が来なければいいから地球ごと消えろ。そんなことを妄想してみても結局何が変わるわけでもない。数時間しか眠れないアラームをセットして、布団に潜り込む。
     明日世界が終わるならどうする?
     会社なんかサボってぐっすり寝る。どうせ終わるなら幼馴染のうるせえホストに告白の一つでもしてみようかと思うけれど、多分そんなことをしたら「何で今日まで言ってくれなかったの」とかお前に泣かれそうだから、やっぱり一生言ってやらねえ。
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    PROGRESSいつか、その隣で笑えたなら/ディルガイ
    「猫の王国」パロ。すけべパートは分けたいので短いですがその3。真相が明かされるよ
    「嘘、だろ……? だってお前、俺よりも少し歳取ってるじゃないか」
    「……君が、即死じゃなかったからだよ」
    「え……?」
    「……僕が知る『一度目』の君は、急凍樹の力により氷漬けになってね。聞いたことはないか? 氷漬けになった動物が、長い年月を生きたまま過ごした話を」
     知っている。知っているがゆるく首を振った。それ以上は聞きたくないとばかりに、震えるガイアにしかし──ディルックはどこまでも、平坦に言葉を続けた。
    「僕は必死に、氷を溶かしたさ。だが君の負った傷は、あまりに深すぎたんだろう。君はそのまま5年ほど眠り続けて……ついぞ目覚めることなく、命を落とした」
    「じゃあなんで、お前は」
    「……生きる、つもりだったさ。それでもいつか、君が助けた……赤毛の猫をある日見かけて、無意識のうちに追いかけた。
     そうしたら、その猫はぐったりした青い猫のそばで必死に鳴いていた。だから僕は、その猫を獣医の元まで送り届けて……さて帰ろう、と思ってからの記憶がない」
    「それで、ここにいた……って?」
    「そうだ。聞けば過労だったらしい。猫を抱えて必死に走ったのが決め手だったからと、僕はここに招かれたけれど」
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