臍曲がりの悋気 オルテガはモテる。
まあ当然だろう。優しくて実直な性格、端正な顔立ち、低い美声、逞しい体躯、美しい黄昏色の瞳。
見目や性格だけでも完璧なのに、更に地位まである。
寄ってくる有象無象は尽きない訳だ。
「……面白くない」
むっつりしながらロアール商会にある自分のデスクの上でペンを転がす。やらなきゃいけない仕事は沢山あるんだが、千々に乱れた心がそれを許しちゃくれない。
「さっきからそればっかじゃん。仕事進まないから早くやる気叩き起こしてよ」
幾度目かの呟きに、同じ部屋で仕事していたダーランが呆れたように声を挙げる。すまんな、やる気は家出してどっか行った。探す気もない。
とあることがあって屋敷に帰りたくなくてロアール商会にやってきたのは良いが、仕事のやる気も起きない。
2586