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    うちよそ(灰島肇と鬼頭彰人)
    一個前のやつのオニイチャン視点

    ##うちよそ

    鬼頭彰人。自分にとってあの人間は、いったい何なのだろう。

    「なあ、俺ってあんたにとって何なの?」

    ああ、まただ。
    時折、こうやって勘違いをした女のような振る舞いを見せることがある。その時は決まって『オニーチャン』として振る舞ってやれば、『弟』は満足げな顔をして見せた。
    ともすれば惚気た恋人同士のやり取りにも似たそれは、なかなかどうして、悪くないとすら感じていた。
    だから、形ばかりの兄弟を演じることに、いつしか慣れきっていたのだ。危ういバランスの上で成り立つそれの脆さから、目を逸らしながら。

    「は?カワイイ弟だろ」
    「そーいうことじゃなくてさ」

    終わらなかった問答に、はたと仕事の手が止まる。続く言葉がどうしようもなく己をかき乱すことを予感していたかのように。

    「オニーチャンじゃなくて、灰島肇としてどう思ってんの、って」

    気付けば鬼頭彰人を見下ろすようにして立っていた。「……え?」と怯えた目で見上げるその顔が、どうしようもなく思考をかき乱していく。
    今更『オニーチャン』以外を求められるなど、思ってもみなかった。わかっていてこちら側には踏み込んでこないのだろうと。どうやらそうではなかったらしい。
    この、ごっこ遊びと呼んで差し支えない関係性を壊したくなかったのは、自分の方だったのだろうか。

    「何て言葉が欲しかったんだ?なあ言ってみろ、鬼頭彰人」

    ぐいと襟元を力任せに掴み寄せても、鬼頭の喉はひゅ、と音を漏らすばかりだった。どうして何も言わない。わかってて聞いてきたんだろうが。どうして、そんな目をしている。
    脆い足場が崩れていく感覚。踏み止まることは、できない。

    「お前がオレの、何だって?」

    鬼頭彰人の入れたヒビを見ないふりもできたはずだった。適当にはぐらかして、いつも通りに喜びそうな言葉を投げてやることもできたはずだった。
    「それは、」と口籠る彼の姿に、それを割って砕いたのは自分の方だと悟った。

    「……帰れ」

    掴んだときと同様に、乱暴に突き放す。思考がまとまらない。灰島肇にとって鬼頭彰人とは何か、その言葉がぐるぐると頭の中を駆け巡っている。
    言葉無く立ち尽くす鬼頭を置いて、絶対に立ち入るなと何度も教えた部屋へと向かう。間違いない。これは、逃げだ。
    部屋の鍵を閉め、とすん、と扉に背を預ける。遣りどころのない感情に小さく声が漏れる。

    「……クソ、」

    いつしか降り出していた雨が、窓を静かに濡らしていた。
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