鼻の奥がツンとしはじめて、こんな顔は見られたくないと、またビーズクッションに顔を埋める。
「……なんで、なんでなん、」
「ん?」
「なんで、怒らへんの。怒ってくれたほうがよっぽど、気ぃ楽なんに、なんで、」
ふわり、ふわりと髪にかすめる感触。その柔らかな手つきに、年甲斐もなく溢れる涙を止められない。雨が降り出した地面のように、じわりとクッションを滲ませていく。
「なんで、って……俺、怒るのは苦手だもん」
「そんなん……っ!」
だったら、あの時怒鳴らせてしまったのは。
揺れそうになる声をおさえようと、唇を噛みしめる。
藍原の手はなおも優しく御坂の髪の上を往復している。包み込まれるような感触に、いまさらになって、藍原の手の大きさを知った。隠し事だらけだと拗ねていたのは自分なのに。本当は自分が、隠されていないことすら知ろうとはしていなかったのだ、と思い知らされる。
「あいちゃんの、あほ……っ」
それでも口をついて出るのはそんな言葉ばかりで。