一対のばらとねどこ 王城近くに屋敷を買ったのは二十五の年だ。
それまでは王城に用意してもらった一室で過ごした。
宿屋の地下を出て城へ居を移す際、酒場の主人は頑張ってこいと背中を押してカブルーの荷物をすべてまとめてバックパック一つにしてくれた。元々そう荷物も多くないから、これがカブルーのもつすべてだった。
やってもらって当然だと思ってるだとか好意を無尽蔵なものだと思っているだとかなんだとか言われる部分が元パーティーメンバーに怒られる原因なのだろうが、人の好意は素直に受け取るに限る。
いつの間にかきれいになっていた部屋はもう帰る場所ではなくなるのだなと、感傷めいたものも覚えたが、忙しくなることがわかっているのはカブルーの気持ちを高めた。
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