寂しさの理由はここはクッキングダム。いつもはゆいちゃん達と一緒に来ているあまねちゃん、どうやら今日は1人みたい。
「あっ、あまねトルー! いらっしゃいトルー! 元気だったトルー?」
奉仕作業中の農園に近づいたあまねちゃんを笑顔で迎えてくれたのは新たなジェントルーちゃん。
「ふふ、私は元気だ。君も元気にやっているようで嬉しいよ」
にこにこしながら話す2人の横から、誰かが颯爽とやってくるわ。
「ナルシストルー!」
あまねちゃんとジェントルーちゃんが口を揃えて言えば、ナルシストルーは満更でもなさそうな顔になったわ。元ブンドル団だった彼だけど、今は奉仕作業に精を出しているみたい。
「また来たのか。律儀なことだな」
そう言いながらも、ナルシストルーは嬉しそうなのを隠せていないわ。
「ジェントルーがどうしているか心配だからな。あと、あなたのことも」
「華麗なオレさまには何の問題もない!」
あまねちゃんが答えたら、ナルシストルーが自信たっぷりに胸を張ったわね。
「それでも、どうしているか気になるんだ。会いに来たら迷惑だったか?」
「そんなことは誰も言っていない……」
あらあら、あまねちゃんとナルシストルー、何だかいい雰囲気ね。微笑ましいわ。
「あっ! そういえば作業の途中だったトルー。2人はまだ話してて大丈夫トルー!」
「ジェントルー?」
ジェントルーちゃん、急に二人から離れていってしまったわ。どうしたのかしら? 残されたあまねちゃんは心配そうに、ナルシストルーも表情からはあまりわからないけれどきっとジェントルーちゃんを心配して見つめているわ。
ここでちょっとジェントルーちゃんの方に近付いてみましょうか。
ジェントルーちゃんが戻った来たのに気付いて、作業中のセクレトルーさんが顔を上げたわ。彼女もナルシストルーと同じく元ブンドルのメンバーね。今はトマトの収穫中みたい。
「あら、ジェントルー。もう彼女と話さなくて良いのですか?」
セクレトルーさんは一瞬ジェントルーちゃんの方を見たけれど、すぐにトマトに向き直って鮮やかな手際で収穫しているわ。ジェントルーちゃんはというと、手が止まってしまっているわね。
「ジェントルー?」
返事のないジェントルーちゃんが気になってか、セクレトルーさんは手を止めて隣のジェントルーちゃんを見たわ。
「どうかしたのですか? 元気がないように見えますが……」
「えっ!? 大丈夫トルー、私は元気トルー!」
「そうですか? それならいいのですが……」
誤魔化すように笑うジェントルーちゃんに訝しげな視線を送るセクレトルーさんだけど、ジェントルーちゃんが気にしてほしくなさそうだから触れないことにしたみたい。でもやっぱり気になるみたいで、向こう側にいる同じく元ブンドル団のフェンネルさんも心配なのかジェントルーちゃんをちらちら見ているわね。
そんな2人の気持ちを察したのか、ジェントルーちゃんがぽつりと溢したわ。
「あまねが来るのは嬉しいトルー。すごく嬉しいトルー。あまねが来てナルシストルーもすごく嬉しそうだトルー。でも、少しだけ……」
ジェントルーちゃんがあまねちゃんとナルシストルーのいる方を見つめたわ。
「ちょっとだけ、寂しい気持ちになるトルー。こんなのおかしいトルー」
「ジェントルー、それは……」
「多分気のせいトルー。すぐ忘れるトルー。2人には内緒トルー」
ジェントルーちゃんはそう言って、寂しそうな笑顔を浮かべたわ。結局セクレトルーさんもフェンネルさんも、そのことでそれ以上ジェントルーちゃんに何かを言うことはなかったわ。
その時、黒い陰がジェントルーちゃん達を伺っていたのだけど、誰も気付かなかったみたい。
この後もまだお話は続くんだけど、今の私が語れるのはここまでのようね。一体これからどうなるのかしら。続きはまた今度。
次の機会にお会いしましょう。