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    he.

    @hnhn242424

    原稿の進捗とか直に置くのは恥ずかしいやつとか

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    POIPOI 37

    he.

    ☆quiet follow

    描いてるうちに浮かんだので文章にしましたが作者は小説を人生で数回しか書いたことがないのでおまけ程度にご覧下さい。

    ――クソつまんねぇ…。
    夜景を見下ろすバルコニーで一条は煙草を燻らせていた。騒がしいだけで中身の無いパーティ…元来こういった場を好まない一条は一通り使えそうな人物に挨拶を終えると、逃げるようにバルコニーに足を運んだ。三月頭のまだ冷たい夜風がアルコールの入った身体に心地良い。
    「店長」
    聞き慣れた声に振り向きもせず、一条は設置の灰皿に灰を落とす。村上はその肩に彼のコートをそっと掛けると、薄く微笑んで隣に並んだ。都会の空は煙のように薄白く曇っている。
    「夜はまだまだ冷えますから…」
    「見たかよ、今日の奴らの顔」
    「はぁ…」
    「どいつもこいつもクズばっかだぜ、金だけは持ってやがる…良いのはそこだけだな」
    「はぁ、」
    仮にも自社のお得意様に悪態を吐く上司を村上はぼんやりと眺めた。眼下の夜景がきらきらと瞳に反射する。この上司の口からは、いつもお世辞にも綺麗とは言えない言葉が次々と出てくるのに彼の大きな瞳はいつも美しい光を湛えている。
    「…いるか?」
    ふいに煙草を差し出され思わず受け取る。手の中のそれは一条の銘柄で、自分の好みではない。
    「ありがとうございます」
    受け取った煙草を口に咥え、村上は内ポケットのライターを探ろうとした。
    「…っ?!」
    突然一条に顔を近付けられ、村上はびくりと跳ねる。
    「火」
    一条はそれだけ呟くと目を伏せて大人しく待っている。まるで接吻を待つような仕草に村上は酷く困惑したが、上司をこんな状態で長く待たせるわけにもいかない。気を取り直し、咥え煙草を相手のそれに近づけた。息を吸う。ジジ…と火が移り、いつもと違う香りが肺を満たした。一条の好む香りで、村上の好みではない。
    火が移ったのを確認すると、一条は表情も変えず身を離した。同じ香りの煙が二本、霞んだ空に消えていく。
    「一条くん!」
    割り入る声に振り向くと、高級そうなスーツに身を包んだ年配の男が立っていた。
    「ちっ、」
    男に聞こえぬようこっそり舌打ちをすると、一条は煙草を灰皿に擦りつける。
    コートを無言で村上に託すと、一条は照明が煌々と輝く会場へ姿を消した。表情は見えなかったが、大層他所行きの顔を貼り付けているのだろう。

    煙草二本分の距離を惜しむ気持ちがあったような、ないような。村上はすっかり短くなった煙草を手に、大きな溜息をついた。
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