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    ビビりが書いた怖くない禍話リライト風

    ##SSモドキ

    あつめられた島一度身についた習慣はなかなか抜けない、という話である。

    ーーーーーーーーーー
    Aさんには無人島に移住した友人がいた。かねてから都会を離れ、悠々自適な生活をしたいと仲間にこぼしていたそうだ。
    ちょうど不動産業界ではそこそこ有名なTという社長に伝手があったAさんは、その話を友人にした。すると友人は喜んで、頼まれるままにアポを取ってやるとあれよあれよという間に移住が決定したそうだ。
    「Tさんスゴくイイ人でさ、オイラ手持ちがあんまり無いって言ったんだけどまず暮らして見るだけでいいって!必要なものとか設備はあっちで用意してくれるみたいなんだ。とりあえず行ってくるぜ」
    そう言い残して旅立ったきり、すっかり居着いてしまったようだ。電波の悪い島暮らしのためAさんと友人は文通をはじめた。島での暮らしの様子がいきいきと綴られた友人からの手紙は、いつしかAさんの楽しみになっていた。しかし、いつからかその内容に違和感をおぼえるようになった。文がそっくりそのまま過去の手紙と重複しているのだ。長く文通を続けていると書いた内容を忘れてしまう事もあるだろうとその時は無理やり自分を納得させた。
    「でもおかしいよな?アイツ口を開けばキンニクばっかりのスポーツマンだったはずなのに、手紙では❝この島に来られて幸せだ。☓☓に会えてよかった。❞とか❝☓☓に似合いそうな家具を見つけたから送る。❞って一体誰のことなんだろうな。よっぽどそいつのことが気に入ったんだろうけど、勘弁してほしいぜ。」
    今でも時折Aさんの元には友人から手紙が届くという。
    ーーーーーーーーーー
    Bさんには年の離れた姉がいる。ある日、島で暮らしたいと言ってフラっと家を出ていった。昔から放浪癖がある子だから暫くしたら帰ってくるだろうと両親は言っていたし、Bさんも特に心配することなく見送った。予想外だったのは数週間後に突然姉が帰ってきたことだった。島で暮らしていたからか、よく日に焼けてはいたが変わりないようで再会を喜んだ。
    「お姉ちゃんのことだからもっとゆっくりしてくるんだと思ってた。あっちで何かあったの?」尋ねても姉はそんなことは無いと笑うばかりだった。
    帰ってきた姉と数日暮らすと気付いたことがあった。リビングで談笑している時でも、お気に入りの番組を見ていても、突然立ち上がり自分の部屋へ向かうのだ。そんなとき姉は必ずDIYをはじめる。一心不乱に金槌を振り下ろす姉に恐怖を覚えたBさんは、なかなかその理由を尋ねられなかった。暫くしてから姉にさり気なく話題を振った。「そういえばお姉ちゃん、昔は工作とか全然好きじゃなかったのに今めっちゃ色々作ってるじゃん。そういうの島で覚えたの?」今まで笑顔だった姉はすっと真顔になるとこう言った。「あれは順番なのよ。アタシの番がきたらやらなきゃいけないの。」
    不穏な空気を感じたBさんはそのまま流してしまったが、これは望んでやってる感じではないなと思ったそうだ。
    何の順番なのか検討もつかないが、姉は今日もDIYしながらレシピを書き溜めている。
    ーーーーーーーーーーーー
    Cさんの叔父は若い頃島で暮らしていたそうだ。都会っ子のCさんはよく叔父に島生活の様子を話すように頼んだが、何故かはぐらかされてばかりだった。そんなCさんも成人し、叔父と酒を飲む機会があった。可愛がっていたCさんと飲めるのが嬉しいのか、叔父はどんどん杯を重ね酔っ払ってしまった。Cさんはチャンスだと思った。いつもはぐらかされる島の話を今なら聞けるかもしれない。予想通りはぐらかされることなく話してくれたのだがその内容というのが奇妙なものだった。
    「島の住民はみんなよくしてくれたんだけどね、一人だけ変わった人がいたんだ。どんな人かって?よく分からないんだよね。なんせ会うたびに全然違うんだ。髪型とかメイクだけならいいんだけど、顔のパーツから髪の長さや色まで何もかも違うんだよ。」それではどうやってその人だと判別するのかと疑問を投げかけると叔父はこう言った「校内放送ってあるだろ?あれの島版。役場の職員さんの声が流れるんだ。昼だろうと夜だろうとどんな時間でも。そうするとその人が現れる。」
    その後も叔父は、様々な話を聞かせてくれたがどれも不思議な話ばかりでCさんの想像していた島での生活とはかけ離れたものだった。
    「だってその人のために風邪を引いても薬を飲まなかったり、わざと住民同士で喧嘩して仲を取り持ってもらうなんて変な話だよねぇ?」
    Cさんはそれきり島の話を叔父に強請ることは無いそうだ。
    ーーーーーーーーーーーー
    これらの話に興味を持ったDさんはなんとその島へ遊びに行くことにした。周囲は止めたが、好奇心の強い性格の彼女はその制止を振り切って飛行場に向かった。
    島に着くと予め予約していたキャンプサイトへ宿泊することになった。島にある役所の職員も感じが良く、住民たちも挨拶をしてくれる。
    なんだ全然変な島なんかじゃないじゃん。
    Dさんは期待外れを残念に思ったが気を取り直して束の間の休暇を楽しむことにした。島の北西にある崖の上のキャンプサイトは住民たちの家とは少し離れた位置にある。耳を澄ますと波の音が聞こえる良いところだ。寝袋に入りながら明日は海岸の方を散歩してみようかと考えを巡らせているところに“それ”はあらわれた。
    ガサガサガサガサ
    え?
    テントの中になにかいる。職員とも昼間挨拶をした住民たちとも違う。じっと様子を窺うとどうやらおんなのこのようだった。「わぁびっくりした!こんばんは。アタイはDっていうの。この島に遊びに来てるんだ。」我にかえったDさんは挨拶をする。
    相手はじっとこちらを見つめながら笑顔のような表情を向けてきた。そしてそのままテントを出ていった。一言も発することなく。
    今のは何だったのだろう。その後もなんとなく眠れなくてラジオの音を聞いていると、外から声がする。
    「夜遅くにすまないね。よかったら家でお茶でもどうだい?」この島の一番の古株だと言っていた女性の声だ。一人で過ごすのを不安に感じていたDさんはその提案に飛びついた。
    役場の近くにある女性の家は家具が充実しており、この島での暮らしの長さが伺えた。若干統一性がない気もするが木目調の家具が落ち着きを持たせている。
    しばらく二人は他愛のない話をし、本題の先程現れたおんなのこについてきくことになった。「アイツは良い奴だよ!この家の家具もアイツが作ってくれたんだ。」彼女は部屋を見回しながら言う。すっかり打ち解けたDさんはこの人がそう言うならちょっと変わった子、くらいの認識に改めようかなと考えていた。
    「でもねぇ…」女性はこちらに向き直りDさんの目をじっと見た。「ウチは多分もうここから出られないと思うんだ。一緒にいすぎたからね。引っ越ししようと思っても、アイツに相談した途端にやめようって気になる。変だよね?自分でもそう思うけどどうしようもないんだよ。…もうここに来ないほうが良いよ。アンタならまだ間に合うからさ。」そこで彼女はちらりと部屋のコルクボードを見る。そこにはA、B…と誰かの名前がいくつも書いてある紙があった。奇妙なことにその名前は上から二重線が引かれている。

    それからDさんは彼女の家で夜を明かした後、ひっそりと島を出た。時々彼女のことを思い出すがどうすることもできないでいるそうだ。

    ーーーーーーーー
    この島については他にも
    ❝全く知らなかったはずなのに急にその島に行きたくなる❞だの❝二度までなら帰ってこれるが、三度島を訪れると帰れなくなる❞という逸話がある。いずれも例の顔のわからない人が関連しているそうだ。
    その人物のための風習が今でも島には根付いているのかもしれない。
    この元無人島は今も何処かに存在する。
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