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    misano414

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    misano414

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    チェズルク前提のルーク+初期チェズレイのファンタジーパロ。
     需要ある?なくても書くけど、ポジティブな反応もらえると嬉しい。無駄に書き込む。

     目の前に広がる大草原。テレビの向こうでしか見ないような、人工物の一切ない、まさに自然といったていだ。トラックに撥ねられたはずなのに、何故こんなところにいるのか。ルークは辺りを見回した。遮るもののない草原の他に、ある一方に森のようなものが見える。それに、森のそばには、道も見えるような。道があるということは、人がどこかにいるということだ。ルークは森に向かって歩き出す。上を仰げば雲一つない空が広がっている。
     寒くもなく、暑くもなく。森へは、10分ぐらい歩けばすぐに着いた。どちらに進めばいいかは判らない。そもそも、どちらが北で南で東で西なのだ。ルークが取り敢えず下したのは、これは一つの夢だという可能性だ。トラックに撥ねられて、重傷を負った自分は、病的な眠りの中にいるのだろう。その手の創作はいっぱい目にしてきた。ドラマ、アニメ、ゲーム……これがタチの悪い夢だとして、目を覚まして現実世界に戻る方法は一つ。何がしかのクエストをクリアすることだ。
    (そうか、これはゲームの世界なんだ)
     そこに至って、ルークは初めて、自身の身支度を確認すべきだと気付いた。ここが夢の世界なら、ゲームを模した世界なら、どんな装備品が与えられているのだろうか。服装は、生前(まだ生きているが)と変わらない。ヒーローのコートに、いつものシャツにズボン。靴も機動性重視のスニーカーだ。以前、チェズレイが贈ってくれたもの。そういえばチェズレイは心配しているだろうか。ルークはかつての部下兼恋人を思い出す。現実世界でどれだけ時間が経っているかは別として、この手のトラブルなんてすぐに嗅ぎ付けているだろう。心配を重ねさせないうちに、さっさとクリアしてしまおうと、ルークは心を決めた。
     と。
     形容できない叫び声と共に、見たことのない生き物が森から飛び出してきた。そいつは、一目散にルーク目掛けて襲いかかってくる。
    「ええっ、いきなり!?」
     警官としての経験から、すんでのところで体当たりを避ける。二足歩行の猫の生き物、いや、魔物か。そいつは、すぐに方向転換してルークに再び襲いかかる。ルークは身体を探る。何か獲物はないのか。何故さっき武器まで確認しなかったのか。武器と防具は買っても装備しないと意味がないよと、NPCがよく話しているではないか。一瞬の後悔、迫る猫の鍵爪、相棒を思い出す鋭い一撃、避けられるが間に合わない、ダメもとで殴りかかるかと覚悟を決めた刹那、
     ギャーッス!
     魔物が判りやすい叫び声をあげて二分された。ルークに襲いかかるはずだったものが、そのまま霧になり消え去る。何かが落ちた音がした。見れば、小さな宝石が落ちている。紫色の、綺麗な石。アメシストだろうか。チェズレイ、と恋人の名前が意図せず溢れ落ちる。世間を騒がせる仮面の詐欺師、S級犯罪者、それでいて実際は受け入れた者への情の深い、美しいルークの恋人。今頃心配しているはずだ、と、心の奥がちりと焦がれる。そういうわけだから、
    「ルーク・ウィリアムズ……?」
     警戒心の残る声音、しかしてチェズレイその人の声が聞こえたとき、ルークは耳を疑ったのだ。
     その人は、綺麗なプラチナブランドの髪を持っていた。背がすらりと高く、見惚れるような美しさも健在だ。だが。
    「……チェズレイ?」
     ルークは、違和感を感じた。まず格好が、違いすぎる。シャツにズボンなんてラフ過ぎる服装の上から、皮の胸当てを嵌めただけの彼は、まず、髪が短かった。肩を少し超えたぐらいの長さか。そして次に、左目のあのペイントがない。これはどういうことだろうか。訝るルークの前で、しかしその男は、ぐらりと倒れ込んできた。
    「大丈夫か?」
     ルークは慌てて駆け寄る。苦しそうな息をしながら、チェズレイ?は自身の腰を指す。そこには小さな皮袋が下がっていた。開けろということだろうと判断し、手に取ると、中から丸薬のようなものが出てくる。チェズレイ?はそれを引ったくるように奪うと、ゴクリと飲み込んだ。
    「しばらく、すれば、治ります」
     その言葉通り、数分後、何もなかったかのように立ち上がり、ぱんぱんと、服の汚れを落とす。
     そして、ルークに対していやに丁寧な頭を下げるのだ。
    「助かりました。先程の猫の魔物……ケットシーと言うのですが……奴に麻痺攻撃を喰らい、身体が痺れて敵わなかったのですよ」
     ニヤリ、と笑うその表情は不敵で。
    「あなたはルーク・ウィリアムズですが……どうやら、私が知っているルーク・ウィリアムズとは違うようですね」
     これもこのクソみたいな世界のなせる技か、と独り言を呟いている。あのチェズレイからクソ、という言葉が出てくるなんてと、ルークは目をしばたかせる。いずれにせよ、彼が自分をケットシートやらから助けてくれたのは確かだから、と、まずお礼をいうことにした。すると、今度はチェズレイ?の方が驚く番だったようだ。
    「御人好しですねぇ。私がわざと、ケットシーをあなたにけしかけたとは思わないのですか」
    「?」
    「たとえば、金目のものを目当てに何も知らない旅人を襲ったとか」
     答えは簡単だ。
    「僕の知るチェズレイは、僕に酷いことはしない」
    「へェ?」
    「だって、君と僕は、恋人同士だし」
    「……は?」
     チェズレイ?は固まった。それはもう、見事なまでに。もしかして麻痺が残っているのでは、と疑うほどに。そこを疑われると僕も悲しくなるんだけどなあ、とルークは頭をかく。しばらくして、チェズレイ?は肩をすくめた。
    「とにかく、ここから1時間ほど歩いたところに街があります。そちらで話は聞きましょう」
     どうやら彼は、この辺の地理に明るいらしい。ルークは、よろしく、と手を出す。握手を交わしてくれたチェズレイ?の手は、素手だった。

     チェズレイ?は強かった。道すがら、先程のケットシーの他に、歩く大根のような魔物(マンドラゴラというらしい)、変な魔法を使う女(ダークウィッチというらしい)、ぶよぶよのスライム(そのまま、スライムという名前らしい)等、何種類かの魔物に出くわしたが、悉くを脚で文字通り蹴散らしていく。どうやら魔法が使えるらしく、ただの蹴りではないらしい。一応武器もあるんですけど、と見せてくれた背中には、錆びたボロボロの剣があった。
    「私も、こことは違う世界から迷い込んだクチでしてね」
     辿り着いた街の宿屋で部屋を借りて、チェズレイ?は話し出す。
    「仕事中にヘマをしまして、開いているマンホールから落ちてしまったんです」
     気がついたらこの世界にいて、そばには錆びた剣が転がっていたという。だがそれよりも、彼の来歴が、ルークには驚きの連続だった。
     いわく、彼は元警官であるという。同じく警官だった父親が、かつて相棒だった男に殺された。その男に出会い、父の死の真相を知るために、あちこち活動していたところをミカグラ島に招聘され、DISCARDという犯罪組織を潰すために行動していたのだとか。
     同じ目的で活動しているチームメンバーに、ルーク・ウィリアムズもいるらしい。ただしそちらのルークは、今のルークと同じく国家警察ではあるものの、もう少し狡猾で、慎重かつ大胆で、チェズレイとは別の男を追っているらしい。
    「それ、もしかして、アーロンだったりする?」
    「アーロン……ああ、確かに、こちらのルークが追いかけている壊し屋は、そんな名前でしたね」
    「……チェズレイ、君が追いかけているお父さんの相棒って、モクマさんだったりしない?」
    「え、いえ…………モクマさんは、同じチームのメンバーってだけで……」
     この反応はおそらく図星だが、それは今、さほど重要ではないのだとルークは判断した。とにかく、目の前のチェズレイはチェズレイだが、ちょっと違う世界から来たチェズレイということだ。当然、ルークの恋人ではないし、ルークに対する対応はニュートラルだ。ペイントがないのを見るに、ファントムに裏切られたという略歴もなさそうだ。そもそもそちらの世界では、ルークとエドワードは本当の親子らしいし、DISCARDの首領は別にいるのだろう。そちらの世界でも父親が黒幕だったら嫌だなあと思ったが、口には出さなかった。
     お互いに、戻るべき場所がある者同士だ。ルークとチェズレイは、クエストをクリアして帰るまで、しばしの共闘関係を結ぶことにした。
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