目の前に広がる大草原。テレビの向こうでしか見ないような、人工物の一切ない、まさに自然といったていだ。トラックに撥ねられたはずなのに、何故こんなところにいるのか。ルークは辺りを見回した。遮るもののない草原の他に、ある一方に森のようなものが見える。それに、森のそばには、道も見えるような。道があるということは、人がどこかにいるということだ。ルークは森に向かって歩き出す。上を仰げば雲一つない空が広がっている。
寒くもなく、暑くもなく。森へは、10分ぐらい歩けばすぐに着いた。どちらに進めばいいかは判らない。そもそも、どちらが北で南で東で西なのだ。ルークが取り敢えず下したのは、これは一つの夢だという可能性だ。トラックに撥ねられて、重傷を負った自分は、病的な眠りの中にいるのだろう。その手の創作はいっぱい目にしてきた。ドラマ、アニメ、ゲーム……これがタチの悪い夢だとして、目を覚まして現実世界に戻る方法は一つ。何がしかのクエストをクリアすることだ。
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