二つにひとつ「お前が選べ」
マトリフの言葉に、アバンは机に置かれた二つの箱を見下ろす。二人は机を挟んで向かい合っていた。机には二つの箱が並んでいる。アバンはその箱をじっと見つめた。
「どちらが本物だと思いますか」
机に並んだ二つの箱は、全く同じ見た目であった。手のひらに乗るほどの大きさで、簡単な作りでありながら、どことなく不吉な雰囲気を感じる。
とある魔族の魂が入れられたという箱がアバンの元に届けられたのは今朝のことだった。それは南方の小さな村にずっと昔から祀られていたものなのだが、連日の豪雨で祠が壊れ、祀られていた箱が外へ出てきたのだという。それ以来、村では不吉な出来事が起こり、村長はその箱の対処をアバンに依頼した。
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