実った果実これはいわゆるバタフライエフェクトというやつなのだろうか
今夜は久しぶりに外で食べようということになり囚人たち(特に一部)が
ウキウキとバスを降りていく ロージャはとくにはしゃいでいて他の囚人がおりるのを急かしていいた。
食事という行為を取らないダンテにはいまいち理解のおいつかないものであった
そんな思考にふけっていたせいか階段をおりようと足をかけた瞬間
がくんと身体落ちる感覚に襲われる 足を捻ったらしい
<ぶ、ぶつかる!>
前を行くロージャにつっこまないように身体をよじろうとするが
同時にぴたとバランスは安定した。
<あ、あれ・・・・?>
どうしたことかとふと上をみるとヴェルギリウスが真顔をで見下ろし
私のシャツの襟を掴んで止めてくれたと理解した
<ハハハッ・・・ナイス・・・ヴェルギリウス>
乾いた笑いと感謝の意思をジェスチャーで伝える
ヴェルギリウスは特に何も言わず手を離し顎でさっさといけと返した
そんな些細なことだったのだがそれ以来 なぜかヴェルギリウスに接触してしまう
事が多くなった。
この前は廊下でヴェルギリウスにぶつかった
この前は囚人に突き飛ばされ彼の胸に飛び込んだときは冷や汗が止まらなかった
この前は・・あぁいややめよう なんだか恐ろしくなってきた・・・。
とにかくこういったことが積もりに積もってある日突然彼からお怒りのお言葉を
もらうようなことがあってはいけないと思い始め
より周りを警戒するようつとめることとした。
そのおかげかヴェルギリウスに接触するといったトラブルは今のところ起きてない
しかし、その過程で時々彼がじっと自分が見ていることに気づいた
視線の分からない時計頭でよかったと思いながら視線をそっとずらす
心臓が激しく鼓動した。彩度のひくい彼の目であってもその赤い目は
ダンテの心を突き刺すには十分すぎる凶器だった。
<どうしてこんな気持ちになるんだ?>
ダンテはこの気持ちをどう表現していいか分からなかった
ただとても苦しくて痛いのに手放したくないとすら思う。
ロージャに聞いてみようかと思ったが、なんとなく話したいとも思えず
”その”感情の扱い方がわからないまま日々を過ごしてしまった。
ある日、ダンテはヴェルギリウスの顔を直視できなくなった。
彼が自分を見ているという状況に耐えられなくなっていた。
彼のそばにいることも耐えれず囚人たちを壁のようにして距離を置いた。
どうせ私の声は聞こえないのだからとファウストを介して意見を飛ばした。
そんなことばかりしているので流石に囚人たちに気づかれて心配されてしまった
「ダンテ?どうしてそんなにヴェルを避けるの?」
ロージャが小声で話しかけてきた。
どきりとした。返答に困っていると
「もしかして・・・、理不尽な暴力を振るわれた・・・」
<そ、そんなことはないよ>
食い気味否定した。だって彼との間には何もないのだから。
「じゃあどうして?何かはわからないけど話してすっきりすることもあるわよ?」
<・・・・・・・・・>
思わずうなだれて整理されてない感情をどう言えばいいか悩む
ロージャだけに聞こえるよう私は言葉を絞り出した
<彼をみるだけ苦しい気持ちになるんだ>
その言葉にロージャはあらとウキウキしたがダンテの深刻そうな状態をみて
「ねぇダンテ今日貴方の部屋にいっていいかしら?」
<え?>
「ダンテ、そこで全部吐き出させてあげるわよ~」
<えぇ???;>
ロージャはウインクのつもりで両の目を閉じて私の肩をバシバシ叩いた
終業後、私の部屋に押しかけたロージャは私から全てを吐き出させるまでは帰らないわよと意気込み
私は洗いざらいを吐き出すこととなった。
ここ数ヶ月の事をゆっくりポロポロとこぼせば
その間なんでもっと早く話してくれなかったのよ~~と嘆かれたりしたが、
おかげで気持ちがすっと軽くなっていくのを感じていた。
本当に楽になるとはおもなかったな
全てを吐き出し、もうこれ以上は何も出ないといった私にロージャは嬉しそうに言った
「それにしてもダンテがあのヴェルにね~~~」
<へ、変じゃないだろうか?>
「そんなコト気にしてどうするの、それより思いは伝えないの?」
結論として、私のこの感情は”恋心”にあたるらしい
私があの男に”恋”をしていたとは考えつかなかったな
でも・・・
<今はやめておくよ ようやく形づいたこの気持ちをもう少し吟味したいな>
「そう、それもいいわねダンテ」
ロージャは朗らかな表情でそういった
部屋に戻るロージャを見送ると私は部屋のベッドに着の身着のまま飛び込む
清々しい気持ちだったが照れくささが勝ってしまい身悶えする
ロージャにはあぁいったが私は多分伝えることはしないだろうなとおぼろげに
思いながら意識を閉ざした。
自分の思いで精一杯だったダンテは気づかなかった
意中の相手当事者がもっとも自分に近いことを。
終わり