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    mhyk_kabeuthi

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    mhyk_kabeuthi

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    お題『ハロウィン』

    ハロウィンキャンペーンの交換ボイスの魔女ネタです。
    カイン女体化しています。

    「なんなのその恰好」
     廊下を歩いていると後ろから声を掛けられた。馴染みのある不機嫌で冷たい声。どうして声を掛けられたのかなんて、聞かなくても分かる。上機嫌で、踊る様にくるりと振り返った。
    「オーエンか?良いだろうこれ!」
     クロエに作って貰ったドレスを見せびらかすように両手を広げる。
     身体のラインがくっきりと出るようにぴったりな…と言うよりもはや布切れと紐だけのドレス。背中はⅤ字カットで、レース素材で縁取り、より大人っぽい印象にしようとクロエが提案してくれた。
     どうだ?と胸を張ればおおきく揺れてちょっと痛い。
     インナーは着けていないが、問題ないようにドレス自体にバストパットがあるらしい。
    「…………なんで女になっているの」
    「ハロウィンの仮装に!面白いだろっ!」
    「なんでそんな下品な恰好なの」
    「えー…魔女っぽくて良いだろ」
    「そんな恰好している魔女いるの?」
    「あははっ!言われてみれば確かに見た事ないな。でもちょっと北の国の魔女っぽくないか」
     北の国の魔法使いは強い。強いと言う事は永く生きていると言う事。まさに大人の雰囲気がピッタリだと思う。
    「北の国をなんだと思っているの」
     どうやらオーエンとは考えが違うらしい。と言うより、滅茶苦茶怒っているような顔でこちらを睨んでいる。正直何がそんなに気に入らないのか分からないが、オーエンがこちらに対して不機嫌な顔をしているのはいつもの事なので気にしなくても良いか。
     そんな風に考えていると、いつの間にかすぐ傍まで来ていたらしいオーエンが目の前に立っていた。
     眉を寄せて、苛ついた顔をしながら、無言でドレスの紐を掴んでいる。
    「あ、そこ引っ張ると服脱げるから気を付けてくれ」
    「…………。なんでそんな脱げやすい服にしたの」
    「クロエが。情熱的で大人の夜って感じがするよねって」
    「あいつ…大人しそうな顔しているけど、しっかり西の国の魔法使いだな…」
    「どういう意味だ」
    「知りたいの?なら、教えてあげようか」
    「お前がそんな事言うなんて珍しいな。気になるし教えてくれ」
    「いいよ」
     オーエンに乱暴に肩を掴まれると、そのままズルズル引き摺られるように、歩き出す。
    「えっ?わ、あ、おい!俺後ろ向きなんだが?」
     そっちは進行方向で歩ているが、元々向き合っていたこっちは逆方向だ。後ろ向きで歩くのは危ない。覚束ない足元が絡まりそうで危険だ。一旦離して欲しい。チラリと横目で窺うと、めちゃくちゃ真顔で怒った顔。話し掛けるなオーラが凄くて声を掛けるのを躊躇われる。
     どうにかして向きを変えようとするが、オーエンにがっちり肩を掴まれていて難しい。
     この細腕のどこにそんな力があるのか。
     魔法を解くか悩んでいると、そのままスッと壁を擦り抜けて、気が付けばオーエンの部屋にいた。
    「? なんでお前の部屋に来たんだ」
    「馬鹿みたいな恰好して、ほんと、馬鹿みたい」
     物みたいに投げられて、ベッドに放り込まれた。
     慌てて身体を起こすと、オーエンが乱暴に外瘻を脱ぎ捨てている。ハンガーに掛けなくても良いのかと思ったが、そんな事聞ける雰囲気ではない。皺にならないと良いな。
    「えっと、オーエン…?」
     逃げるように、後退ると背中に壁が当たった。
     ドン!とオーエンが壁に手を付いて、腕の中に閉じ込められる。これじゃ逃げられない。
     細い指をネクタイへ駆けると、シュルリと音を立てて解く。
     こいつなんで服を脱いだんだと、嫌な汗が背中を流れた。心臓が大きな音を立てて早鳴る。
     オーエンの手が、こちらに伸ばされた。
     ドレスの紐を掴むと、乱暴にそれを引き抜く。
     布切れみたいな服は、正しくただの布切れとなってシーツの上に落ちた。
    「あの…おーぇん…さん?」
     窺うように、上目遣いでオーエンを見る。
     眼が、据わっている…。
     
    「そんな馬鹿みたいな服、二度と着れない身体にしてあげる」

    ◆◇◆◇◆◇◆ 


    「あっカイン!」
     階段を降りてくるカインを見つけて声を掛けて駆け寄る。
    「クロエ……」
    「あれ、カインその恰好どうしたのか?」
     彼、いや今は彼女を見て違和感を覚えた。つい数時間前に仕立てたドレスの上に白い外套を羽織っている。しかもそれはどう見てもオーエンのもの。その下にはドレスだが、それにもおかしな処がある。
    「カイン、何かあったの?ドレスが破けちゃっているけど」
    「っ、その、折角作ってくれたのに悪い…えっと、さっき転んだ時に引っ掛けて破けちまったんだ」
    「え、大丈夫なの、怪我はしていない?」
     身体の様子を窺おうとすると、オーエンの外套をぎゅっと握りしめて、まるで肌を隠すように身体を抱き締めた。
    「カイン?」
    「わ、悪い。怪我はないんだが、ちょっと寒くて」
    「あ、だからオーエンの外套を羽織っているんだね」
     カインの身体が大きく震えた。相当寒いらしい。カインと一緒にデザインを考えていた時は「俺は元々体温が高いからこれぐらい肌を出していても全然寒くないさ」と言っていたけど、やっぱり布地が少なすぎたのかもしれない。露出している処を隠すようにしている。もしかしたらお腹とか冷やしちゃったのかも。
    「カイン、ドレスも破けちゃっているみたいだし、仕立て直そうか?」
    「ありがとう。折角作ってくれたのに破いちまってごめんな…。その…もし直してくれるなら一つお願いしても良いかな」
    「良いよ、なんでも言って」
    「……もう少し露出は控えめでお願いしたいんだが」
    「……! うん、分かった、任せて」
     やっぱり寒かったみたい。体温調節出来る魔法はあるけど、一日中魔法を掛けているわけにもいかないし、服の保温性をもう少し考えてみても良いかも知れない。また新しくデザインを考える楽しみが出来てワクワクしてきた。
     今度はオーエンの外套を羽織るのを前提にデザインしてみるのも面白いかも。オーエンにデザインに取り入れも良いか聞いてみようかな。
    「そうだ!カイン、これから一緒にオーエンの所に行かない?」
    「………………遠慮しておく」

     
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