黄金の手「よ~こそ迷える子羊ちゃん♪この名探偵ヨワハラに何か――」
「張り紙見ました、体力があれば雇ってもらえるんですよね」
雨が降っていたその日の、初めての来客が彼だった。
*
「傘もささずに雨の中来たの?まるでずぶ濡れの子犬だねえ。まぁまるでも何もずぶ濡れなんだけれど」
「すいません、余裕がなくって」
「タオルでしっかり拭いて、そうしたら話を聞かせておくれよ」
「ありがとうございます」
ボクがタオルを渡すと彼はぎこちなくそれで髪や手足を拭って、ソファに座った僕を見下ろす。
視線が泳いでいるのは緊張しているからか、それとも現状への不安があってかな。
「座ってどうぞ?」
「でも濡れてるんで…」
へえ。
「…わかった。じゃあまず、アナタのお名前は?」
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