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    ichiya_0825

    @ichiya_0825

    五夏を書いたりしています。

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    ichiya_0825

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    7/13に発行する予定のヤパロオメガバース五夏です。

    ☑オメガ五×アルファ夏のヤクザパロです。
    ☑オメガバースに関して、独自の設定が含まれます。
    ☑ヤパロらしい暴力描写があります(五夏間ではありません)
    ☑全体のサンプル及び本には以下の内容が含まれます。
    ☑結腸責め/攻めのフェラ/尿道プレイ/エネマグラ/潮吹き/たぶんこれくらいだと思う他にもあったらすまん。

    同じ地獄で待つ6/五夏「いつもの養豚場にやって」
     外に待機していた運転手に指示を出し、部下も数人集める。別に夏油が全部やってもいいが、ひとりで行動すると部下の立つ瀬がないと言われるのだ。夏油の部下は、夏油に忠実ではあるが、言うことは言う連中が多い。中には夏油を小さい頃から見てきたような人間もいるので、あまり強くは言えないのだ。
    「着きました」
     東京湾アクアラインを経由して、千葉県に入る。走り出してから一時間と少しして、運転手が静かに車を駐めた。
     ここは、いつもこういう時に使っている養豚場のひとつだ。養豚場は便利である。豚はなんでも食べてくれるから、証拠というものがが残らない。ここの主は夏油に長年借金をしているので、よく使わせてもらっていた。ちょうど呼び出した部下も同じ頃合いで到着したので、部下達に男を担がせ、豚舎の方に向かう。
     薄暗い豚舎に煌々と灯りをつけると、それに驚いた豚たちが騒々しく鳴いた。そのけたたましい声を聞いてようやく、男が呻き声を上げて意識を取り戻す。
     しかし、起きたからと言ってここに逃げる場所はない。部下達にそのまま豚房に放り投げるようにされて、男は地面にどっと倒れ込んだ。
    「さて、起きたかい?」
     部下が豚舎の端からパイプ椅子を持ってきたので、そこに腰掛けてから夏油は静かに男に声をかける。男は何が起きているかまるでわかっていないようで、地面に倒れ込んだまま、目を白黒とさせていた。
    「君にはいろいろ話して貰いたいことがあるんだよ」
     そこにきて、ようやく男は夏油がクラブで会った人間であることに気が付いたようで、何しやがる、と低い声を上げる。しかし、いくら恫喝しようとも夏油には意味がない。だが、それが気に障ったのだろう、連れてきた部下のひとりが、容赦なく拳で顔面を殴った。一発で男の大きな身体が吹き飛び、豚たちが大きな悲鳴を上げて逃げ惑う。
    「がぁ!」
    「あぁ、こらこら、あんまり顔はやらないでくれ。後で困るからね」
     後で男のスマートフォンも細かく調べさせて貰おうと思っている。最近のスマホは顔認証だから、人相が変わるほど殴られると余計な手間がかかってしまうのだ。指紋認証の時は必要な指を切り取ってしまえばことが済んだが、今はそうもいかない。
     とりあえずは素直に話してくれるようになるまでは、部下達に任せることにした。部下の連中もこういうことには慣れているので、数人で取り囲み、男に容赦なく殴る蹴るの暴行を加える。その間も男はいろいろと喚いていたが、これといって特に意味のある情報はなかった。
     しばらくして、ようやくある程度まで男が静かになったところで、夏油は椅子から立ち上がり、豚房に向かう。土に塗れた男の襟元を掴み、ぐ、と引き上げて、顔を寄せた。
    「うちのシマでいろいろやったんだ。覚悟はしているんだろう?」
     そう言われてようやく、夏油が松木組の手の者であることを理解した男は、今度は、言われた通りにやっただけだ、と喚き出した。言われた通り、か。ひとまずはそれを信じてやるように、誰に言われたのかを聞き出す。すぐには喋らなかったので、重ねて何度か腹に蹴りを入れてやると、男は悲鳴混じりに「大木って男だ」と叫んだ。
    「へぇ? それ、信じて貰えると思ってる?」
    「本当だ! 嘘じゃない!」
    「じゃあ大木がどんな奴かも知っているんだろう? 上手くいくと思ったかい?」
     あまり根性のない男で助かった。骨の数本でも折ってやらなければ何も話さないかもしれないと思っていたが、随分と簡単に情報を吐いてくれた。
    「でもねぇ、こればっかりは証拠がないよ。君がただの使いっ走りだっていうなら考えないでもないけど……」
    「俺は言われた通りに薬を捌いてただけだ! 仕入れてきたのは大木の奴だ!」
     男は必死になってそう言い募る。真実だろうか。たぶん、真実なのだろうとは思う。けれど、もう少し確証が欲しい。部下に目線をやると、部下達は無言で男の両脇から抱えるようにして男を立ち上がらせる。そうして柵の方に押し付けると、柵の上に大きく左手を広げさせた。
    「悟」
     そう声をかけると、五条が車の中から小さめの枝切り鋏を持ってくる。それを見て、男は何をされるのかわかったのか、それだけは勘弁してくれ、とまた喚き立てた。
    「自分がやったことの責任くらいとらないとねぇ」
     左手の小指を挟むようにして、枝切り鋏を構える。それを見て必死に男が止めるのを無視して、夏油はばちん、と音を立てて鋏を動かした。しかし、ところどころ錆びた枝切り鋏はそこまで切れ味のいいものでもないので、一度では全部を切り落とせず、指が半分くらいまで落ちるのが見える。
    「ぎゃあああああ!」
    「ほらほら、あんまり動かないで」
     夏油はそんな風に笑って、そのまま無造作に残っていた残り半分も切断する。男の汚い悲鳴と共に、ごろり、と指が地面の上に落ちた。
     夏油はそれを拾い上げると、何の躊躇もなく、ぽい、と豚房の中に放り投げる。途端に、それを餌だと思った豚たちが指に群がっていくのが見える。男の指は、瞬く間に豚の餌になった。
    「で、大木がなんだって?」
     しかし、男は苦しそうに呻くばかりで、返答をよこさない。
     仕方ないなぁ、と夏油は呟いて、また男を柵の方に寄せさせた。次は薬指だ。まぁ、親指と人差し指が残っていれば、日常生活はどうにかなる。多少不格好ではあるが、利き手は避けてやっているのだ。感謝して欲しいところだ。
    「もう一本いこうか」
    「あぁあああ! 話す! 話すから! 勘弁してくれ!」
     薬指に枝切り鋏がかかったところで、男はとうとう情けなく泣き出してしまった。涙だけでなく鼻水も出ていて、顔はもうぐちゃぐちゃだ。それを何の感慨もなく眺めながら、ふぅん、と夏油は小さく呟いた。
    「じゃあ、すっきり話してくれよ。場合によっちゃ左腕、なくなるかもしれないよ?」
     その脅しが冗談ではないとわかっているのだろう。男はこくこくと頷き、大木との関係を話し始めた。どうやって薬の受け渡しをするのか、歩合は、どこであれだけの麻薬を量産しているのか、思っていたよりも男はいろんなことを知っていて、それなりに役に立ってくれた。
    「うんうん、よくちゃんと話せたね」
     そうにこやかに言って、今度は一度でばちん、と薬指を切り落とす。今回は夏油が投げ込むまでもなく、最初から豚房の方に転がっていった。男の汚い悲鳴が響き渡る。
    「あはは、無事に帰れるなんて、まだ思ってた?」
     ここまで話させたら、もうこの男に用はない。帰られて、大木に何か話される方が面倒だ。ここで殺して細かく切断してしまって、全部豚に食わせてしまうのがいいだろう。
    「あ、死ぬ前に携帯ね、忘れるところだった」
     顔は一度しか殴っていないので、そこまで人相も変わっていない。スムーズにスマートフォンのロックを解除して、セキュリティを外す。ここまできたら、この男はもう用無しだ。面倒な処理は部下に任せることにして、夏油は五条を連れて車に戻った。
    「あれ、大木のとこに連れてかなくていいの?」
    「どうせのらりくらりと逃げるさ。まずは工場を押さえよう」
     そう言って携帯電話の中身を確認する。男は、馬鹿なのかもしれない。奇跡的に、大木とのやりとりをそのまま携帯電話に残していた。そこから工場の位置を割り出し、数人の部下を追加で呼び出して襲撃をかけることにする。
     工場は笑えることに、ほんとうにドーナツ工場だった。たぶん潰れた工場でも安く買い叩いたのだろう。こういう類の工場は夜だから動いていないということはない。大木に男と連絡が取れないことに気付かれても困るし、ここからは時間との勝負だ。そのままアクアラインを抜けて東京に戻り、問題の工場に向かう。深夜ということもあり、あまり道が混んでいなかったので、行きよりも早く戻ることが出来た。
     案の定、工場には煌々と明かりが点いていて、五条と夏油は堂々と正面からその工場に乗り込むことにする。こんな風に襲撃されるとは思っていなかったのだろう、特に警備らしい警備もついていない。
    「ちょ、ちょっと、あなたたち、誰ですか?」
     工場のスタッフだと思われる人間が慌てて止めようとしてくるのを無視して、五条と夏油は真っ直ぐに奥に向かう。もちろん、強硬手段で止めようとしてくる連中もいたが、どれもすぐに続いてきた部下にのされてしまった。
     程なくすると、そんな騒動が奥にも伝わったようで、ようやくひとりの男が奥の部屋から出てくる。人相が悪く、とても工場のスタッフには見えない顔をしているから、監視役のひとりだろうと思われた。
    「おい、おま……」
     そこまで言って、男は夏油の顔を認識すると、途端に真っ青になる。この男は、組の構成員のひとりだ。夏油はこれでも子分の殆どの顔を覚えている。つい最近入ったような者や使われているような連中まではカバーしきれない部分はあるが、部屋から出てきた男には見覚えがあった。大木の懐刀とまでは言わないが、取り巻きのひとりである。男は、夏油の姿を見た途端、逃げ出そうとした。
    「へぇ、君もそうなんだね」
     そう呟くように言うと、男が逃げ出してしまう前に、夏油は飛びかかるようにしてその背中に大きく蹴りを入れた。その男はその力に逆らわず無様に転がって、それでも床を這ってまで逃げようとしたが、すぐに部下達に捕まえられる。これで大木を追い詰める要素はまたひとつ増えた。とはいえ、まだ他にも監視役の連中がいるかもしれないので、念のため男が出てきた部屋に入ると、そこには倒れた男以外には誰もおらず、やはり監視部屋として使っているようだった。
     どうやらその部屋は作業員が妙な動きがしないかどうかチェックするための部屋のようで、工場内をいろんな角度から撮影しているらしく、いくつかのモニターが並んでいる。そこでは主に外国人の労働者やホームレスのような高齢者がひとつひとつ薬を梱包したりしていた。
    「何人かここによこして。私と悟は大木のところへ行く」
    「ついていきます」
     そう言った数人の部下を連れて、夏油はそのまま大木の本宅へ向かうことにした。一日大木に張りつけている部下からは、大木は今夜は外出せず、自宅に戻っていると聞いている。ちゃんと証拠になる麻薬の現品も工場から拝借して、いくつか持ってきた。あとは大木自身に、ケジメをつけさせるだけだ。ここまで準備したのだ。もう言い逃れは出来ない。
     器用な部下にピッキングさせて玄関の鍵を開け、そのまま土足で大木の自宅に乗り込む。大木はリビングのソファに座り、妻とふたりで酒を飲みながら寛いでいたようで、突然入ってきた夏油に大きく狼狽した。
    「な、何の用だ」
    「そんなの、大木さんが一番わかってるじゃないですか」
     そう言って、監視役の男を大木の方に突き飛ばし、さらにはテーブルの上に先程拝借した麻薬を転がす。しかし、大木も度胸があるので、そんなのは知らないと言い張った。
    「これでも言います?」
     そう言って、夏油はスマートフォンを掲げる。そこに映っているのは先程豚の餌になった男の動画だ。ちょうど大木との関係を吐露しているところである。
    「可哀想だなぁ。貴方と関わったばかりにこんなことになっちゃったんですよ」
     動画にはもちろんまだ続きがあって、最終的に男が細かく切り刻まれ、豚に食われるところまで映っている。それを目の前ではっきりと見せてやると、さすがに大木の表情が変わった。夏油が軽く脅しに来たわけではなく、本気で話を詰めに来ているのだとわかったらしい。
    「この携帯ね、随分管理が杜撰で。全部残ってますよ。どうします?」
     たぶん、やはり大木はちゃんと消せと言い聞かせてのだろう。苦虫を噛み潰したような顔をしていた。こんな下らない証拠が残るようなことをする男ではないのに、ちゃんと自動で消去してくれるような専用のアプリを使わないからこんなことになる。そういうところの詰めが甘いのだ。だから、夏油なんかに追い詰められることになる。
    「ご自分から、ケジメをつけてください。それが最後の義理ってやつでしょう」
     それは暗に、夏油から代行に言うことはしない、と言っている。それを聞いて、大木はひどく驚いたような表情を浮かべた。このまま強制的にでも、夏油に連行されると思っていたらしい。
    「……貴方には、お世話になりました。出来るなら、こんなことはしたくなかった」
     しかし、だからといって見逃せる案件ではない。これがぎりぎりの譲歩だ。せめて最後くらいは自分でケジメをつけて欲しい。幼い頃から憧憬すら感じていた男に対して、それだけが夏油の願いだった。
    「私も付き添います。行きましょう」
    「……まさか、お前に追い落とされるとはな」
     小さく息を吐き、とうとう諦めたように大木が言う。ここでこれ以上足掻くことはしないようだ。こういう思いきりの良さも、好きだった。ほんとうに自分さえいなければ、こんなことにはならなかったかもしれない。弟を跡目として、結束してあの組はやっていけたのかもしれない。そう思うと、もう堪らなかった。
    「……行きましょう」
     結果、大木は赤字破門となった。これは渡世の世界に、大きく広がる。大木は、もう二度とこの渡世の世界に戻ってくることは出来ないということだ。
     それでも殺されなかっただけ、処分はこれまでの大木の功績に配慮されたものだったと思う。仕上げを終えて、夏油は本宅の自室に戻った。いつもならこの部屋でなく五条のいる離れに向かうところだが、今日はどうしてもそうする気にはなれなかったのだ。ひとりで普段は使わない大きなベッドに寝転がり、考える。
     今回のことは、始まりに過ぎないのかもしれない。これから弟が成長するにつれ、こういう問題は増える一方だろう。親父が服役を終えて跡目をはっきりさせてくれればすこしは落ち着くかもしれないが、それは随分と先の話だ。それまで何度、こんな思いをするのだろう。そう考えると、すこし嫌気が差した。
     自分さえ、いなくなれば。そう考えたことは何度もある。だが、ここに残るのもひとつのケジメだと思っていた。親父に不要だとはっきり言われるまでは、跡目としての役割を果たさなければいけない。それに今、自分が抜けてしまえば、組は程なく瓦解するだろう。誰に言われなくても、それもわかる。その上で、もし親父が弟を跡目にするというならば、その環境が整うまではいなくては夏油はここに留まらなくてはいけない。
     そんな考えが常に頭の片隅に常にあったせいだろう、どうにも思考が鈍る状態が続いていた。外には出していないつもりだが、たぶん五条は勘づいていたのだろう。遠回しに気遣われる日々が続いた。
     そんな中、ようやく事件が解決したのだから、家入が久し振りに飲もうと言って誘ってきて、断る理由もなく、そこに五条を伴って出かけることになったのが今日だ。店は夏油が選んだ。日本酒と蕎麦や肴が美味い店だ。
     事件が起きたのは、その時だった。こういう時の飲み会は大抵が夏油持ちである。先に外に出ていたふたりを追うように支払いを終え、店を出る。その時、背後で大きな奇声が上がった。
     はっきりはしないが、夏油とかなんとか、その男は叫んでいたのだと思う。別に、油断していたわけではない。ただ、ほんの一瞬だけ、避けるのを躊躇ってしまった。その瞬間、どん、と身体が押されて、夏油は横に倒れる。刺されたのだ、と思った。しかし、いつまで経っても痛みは感じない。
    「さ、とる……?」
     地面に倒れ込んでいたのは、自分だけではなく、五条も一緒だった。どんとぶつかった衝撃は襲撃者ではなく、五条だったのだ。それが意味するところに、一気に顔が青褪める。
    「悟!」
     慌てて抱き起こすと、どろ、と伝うように血が流れているのがわかった。
     包丁が、腹に突き刺さっている。どうやら脇腹を刺されたらしい。目の前には呆然としたひとりの男が座り込んでいて、夏油は反射的にその顔を殴り飛ばしていた。男が仰向けに転がり、その上に乗り上がるようにして何度も殴る。何本か歯が折れたのか、男が低い呻き声を上げたが、それでも夏油は止まれなかった。
    「馬鹿! そんなことしてる場合か! 車を呼べ、すぐにうちに運ぶ!」
     そう家入に耳元で叫ばれて、ようやくはた、と夏油は手を止める。夏油の下にはもう呻くことしか出来ない男がいる。殺してしまいたい。そう思った。だが、それは後でも出来る。すぐに夏油は部下の車を呼び、五条を家入の医院へと運び込んだ。
    「私がやる! お前は下がってろ!」
     すぐに五条は手術室に運び込まれ、手術中のランプが点された。夏油が殺しかけた男は、ちゃんと部下が確保している。たぶん、大木の部下だろう。大木が破門されたことで自棄になって夏油を狙ったのだと思った。
    「どうして……」
     思わず、そう呟く。どうして、自分なんて庇ったのだ。五条にだけは、こんな目に遭って欲しくなかった。だから今までずっと隠すようにして生きてきたのに、こんなことになるなんて思ってもみなかった。
     手術中のランプを見つめながら、夏油に出来ることは祈ることだけだった。たぶん刺された位置的に、そこには大きな血管も臓器もないはずだ。だから、助かる。そう思いたい。家入は腕もいいし、きっと助けてくれる。ただ、家入を信じればいい。しかし、何度そう言い聞かせても、湧き上がる不安は消えなかった。
     それから、どれくらい時間が経ったのだろう。実際のところ、大して時間は経っていないのかもしれないし、もう何時間も経過しているのかもしれない。そんな感覚さえおかしくなってしまって、いつもならはっきりとわかる時間感覚も曖昧だった。
     手を組んだまま下を向いていると、突然ぽん、と肩を叩かれる。弾かれるようにして夏油が顔を上げると、そこには家入が立っていた。
    「終わったぞ。死んでない」
    「よ、かった……」
     家入がそう言うのだから、経過は悪くないはずだ。家入は、そういうことを無闇に隠すような人間ではない。
    「急所を外れてたからな。軽く縫っただけだ。しばらくは安静だけど」
     そうして連れて行かれた病室では、照明が落とされており、まだ麻酔の効いている五条がベッドの上で昏々と眠っていた。
     ──静かなものだ。いつもふたりでいる時は五条の方がよく喋るから、こんな風に静かにしているのは、そうそう見ることはない。その姿はまるで死んでしまったかのようにも見えて、背筋が寒くなる。でも、一歩間違えたら、そうなっていたのだ。
    「今晩入院して、明日帰っていいよ。どうせお前が付き添うんだろ」
    「あぁ。他の誰にも任せられない」
     申し訳ないが、明日からはしばらく休暇だ。面倒ごとは全て、部下達に任せることにさせてもらう。明日には連れ帰っていいと言われて、今晩はどうしようか悩む。この医院は部下達に警備させているし安全だろうが、だからといって五条をひとりでここに置いていくのはどうしようもなく不安だった。夏油がそう考えているのを家入も悟ったのか、空いている隣のベッド使っていいぞ、と言ってくれる。
    「ありがとう。助かるよ」
    「ちょうど部屋空いてたからね。ちゃんとふたりぶん金は取るから安心しろ」
    「いくらでも毟り取ってくれていいよ」
     そうは言っても、家入が法外な値段を請求してくることはない。ヤクザのお抱えの医師と言えば、そうやってあぶく銭を稼ぐのが普通のことなのに、家入は医院の収入だけで生活を賄っていた。夏油の仕事は、いい酒を貰うためのおまけだと笑うくらいだ。
    「おやすみ。お前もちゃんと寝ろよ」
    「うん」
     だが、家入が出て行った後も夏油は長いこと隣のベッドに入ろうとはしなかった。五条の眠るベッドの横にパイプ椅子を持ってきて、座り込む。そうして、五条の寝顔を随分と長い時間、ぼんやりと眺めていた。
     あの表情がないと五条の顔は美しすぎて、どこか精緻な作りもののようだ。濃く長い睫毛が月明かりで顔に影を落としている。いつも夏油に笑ってくれるくちびるは固く閉ざされたままで、何も語ってはくれない。
    「悟……」
     やっぱり、こんなことは早く終わりにしなければいけなかった。五条は、今はもうひとりでも生きていけるのだ。とうに、小学生の幼い子どもではない。
     それなのに、あとすこし、もうすこし、と先延ばしにしてしまったのは、夏油だった。五条の隣はどうしたって居心地がよくて、離れられなかった。でも、それももう終わりにしよう。そう静かに決意する。それは、随分と月の明るい夜のことだった。
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    ichiya_0825

    DONE7/13に発行する予定のヤパロオメガバース五夏です。

    ☑オメガ五×アルファ夏のヤクザパロです。
    ☑オメガバースに関して、独自の設定が含まれます。
    ☑ヤパロらしい暴力描写があります(五夏間ではありません)
    ☑全体のサンプル及び本には以下の内容が含まれます。
    ☑結腸責め/攻めのフェラ/尿道プレイ/エネマグラ/潮吹き/たぶんこれくらいだと思う他にもあったらすまん。
    同じ地獄で待つ6/五夏「いつもの養豚場にやって」
     外に待機していた運転手に指示を出し、部下も数人集める。別に夏油が全部やってもいいが、ひとりで行動すると部下の立つ瀬がないと言われるのだ。夏油の部下は、夏油に忠実ではあるが、言うことは言う連中が多い。中には夏油を小さい頃から見てきたような人間もいるので、あまり強くは言えないのだ。
    「着きました」
     東京湾アクアラインを経由して、千葉県に入る。走り出してから一時間と少しして、運転手が静かに車を駐めた。
     ここは、いつもこういう時に使っている養豚場のひとつだ。養豚場は便利である。豚はなんでも食べてくれるから、証拠というものがが残らない。ここの主は夏油に長年借金をしているので、よく使わせてもらっていた。ちょうど呼び出した部下も同じ頃合いで到着したので、部下達に男を担がせ、豚舎の方に向かう。
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    ichiya_0825

    DONE7/13に発行する予定のヤパロオメガバース五夏です。

    ☑オメガ五×アルファ夏のヤクザパロです。
    ☑オメガバースに関して、独自の設定が含まれます。
    ☑ヤパロらしい暴力描写があります(五夏間ではありません)
    ☑全体のサンプル及び本には以下の内容が含まれます。
    ☑結腸責め/攻めのフェラ/尿道プレイ/エネマグラ/潮吹き/たぶんこれくらいだと思う他にもあったらすまん。
    同じ地獄で待つ5/五夏

     家入からの連絡は、それほど待たされることはなかった。五条が密かに家入の医院を訪ねて、数日もした頃には家入から医院に来るよう連絡があり、五条と夏油はその個人医院へと足を向けた。
    「また面倒なものを持ち込んでくれたな」
    「はは、ごめんって」
     そう五条は謝るが、全然心がこもっていない。家入は心底呆れたような顔で、ふたりに応接セットのソファに座るように促した。
    「で、どうだった?」
    「まぁ、アタリかな。お前らが探してるブツで間違いないだろうよ」
     家入曰く、これは煙草の葉にMDMAの一種を浸したものだという。MDMAは、アンフェタミンと類似した化学構造を持つ化合物であり、愛の薬などと呼ばれることもあり、共感作用が強いものだ。それに類似した物質が検出されているが、まぁ出来としては不純物も多く、粗悪品にあたる代物だろうというのが家入の見解だった。
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    ichiya_0825

    DONE7/13に発行する予定のヤパロオメガバース五夏です。

    ☑オメガ五×アルファ夏のヤクザパロです。
    ☑オメガバースに関して、独自の設定が含まれます。
    ☑ヤパロらしい暴力描写があります(五夏間ではありません)
    ☑全体のサンプル及び本には以下の内容が含まれます。
    ☑結腸責め/攻めのフェラ/尿道プレイ/エネマグラ/潮吹き/たぶんこれくらいだと思う他にもあったらすまん。
    同じ地獄で待つ3/五夏「怪死事件?」
     五条の発情期が明けて、最初に部下から聞いた報告はそれだった。本宅にある広い部屋に集まって、直属の部下達からこの数日の間に起きた出来事について確認するのが発情期明けの恒例行事だ。五条は、別にもう発情期のだるさも抜けただろうに、寝間着にするような淡い青の浴衣を着て、夏油に撓垂れ掛かるように横に座っていた。その姿はまるで夏油の情婦だとでも言わんばかりだ。しかし、これもいつものことなので、いちいち気にするような連中はいない。
    「はい、既に麻薬絡みだと警察も動いているようで……」
     そうして見せられたのは、数枚の写真だった。どれも薄暗い路地裏で、それぞれ若い男女の死体である。一部アップにされた手足の皮膚の写真は、どれも異様なほどに血管状に内出血が広がっていて、とても自然死には見えなかった。
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    ichiya_0825

    DONE7/13に発行する予定のヤパロオメガバース五夏です。

    ☑オメガ五×アルファ夏のヤクザパロです。
    ☑オメガバースに関して、独自の設定が含まれます。
    ☑ヤパロらしい暴力描写があります(五夏間ではありません)
    ☑全体のサンプル及び本には以下の内容が含まれます。
    ☑結腸責め/攻めのフェラ/尿道プレイ/エネマグラ/潮吹き/たぶんこれくらいだと思う他にもあったらすまん。
    同じ地獄で待つ2/五夏 この世界には、男女という大きな性別の区分のほかに、思春期頃になってようやくわかる第二性というものが存在している。それは大きく、アルファ、ベータ、オメガ、という三種類に分けられていた。
     アルファは、世界の支配層だ。格別優秀な者が多く、オリンピックで活躍したり、世に名前を轟かせる経営者になったりする。オメガは、それに対して産む性である。定期的な発情期を持ち、その期間の性交では高い確率で妊娠する。アルファは、アルファやベータ相手の着床率が致命的に低い。しかし、それさえも孕むことを可能にするのがオメガという種だ。アルファとオメガの番いで相性のいいものは、高確率でアルファを妊娠、出産すると言われている。そうなると世界はアルファとオメガに支配されてしまうように思われるが、アルファとオメガは出生率自体が低く、ベータに比べて極めてその数が少なかった。特に、オメガはその特殊性から人身売買の標的にされることもあり、第二性が大きく隠されなくなった今の時勢であっても、番いを持たない者は第二性を公言せず、身を潜めて生きているというのが現状だ。
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