0802「どうしたの、これ?」
そんな声がして振り返った先には、作り物のウサギの耳が付いたカチューシャを持つ牙琉検事の姿があった。何でよりにもよって見つかってしまうんだ、と焦ってその手から白い耳を取り返す。
「人のカバン勝手に漁らないでくださいよ」
「思い込みは良くないな。君が床に置いたカバンが偶然開いてて、その耳がはみ出してただけだよ」
やれやれと首を振り、長い金髪がさらさらと揺れる。そんなムカつくような仕草ですら絵になるから困る。少しばかり不機嫌そうな顔をしてみせるが向こうは全く意に介さず、興味深そうにオレの手元を指差した。
「で、どうしたんだい。そのウサギ耳?」
「ここに来る前、みぬきちゃんのショーの手伝いしてたんですけど、今日はウサギをテーマにするとか何とかで……」
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