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    kinkonkanppp

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    ヤパロです!
    こーあん太刀川✖︎二宮組長の始まりの話
    漫画にしようと思ったんですが、作画カロリーに敗北し、慣れない小説にしました。小説…にもなっているのか……。

    #太刀二
    taishoIi

    こーあん太刀川と二宮組長の始まりの話 夕陽が屋根と屋根の間に近づく頃、公園で走り回るのに飽きた俺はアパートの駐車場で素振りをすることにした。公園で見つけた一等長く太い枝は、まさに修行にうってつけなのだ。振れば振るほど強くなる気がする。去年小学校へ上がったばかりだけど、運動なら誰にも負ける気がしない。
     おんぼろアパートにオレンジの陽に当たって俺の影もぐーんと背が伸びる。
     早くこれくらい大きくなればいいのに。伸びた影の頭の先っぽを見つめていたら、向こうから黒いランドセルに大きな手提げを二つも持った幼馴染が見えた。

    「まさたか〜」
     まさたかは俺の声で俯いていた顔をパッとあげた。
     いつからか、まさたかと目が合うたびに俺の心はパチパチと音を立てる。かーちゃんが誕生日にコップに注いでくれる炭酸のジュースのようにしゅわしゅわ弾けるのだ。
     でも今日のまさたかはまたすぐ顔を伏せてしまったので、走って駆け寄る。

    「おかえり。よっちゃん元気になってたか?」
     ふるふると俯いたまま首を振る。まさたかの髪が目の前でふわふわ揺れた。(まさたかの髪はみりん揚げみたいに茶色くてツヤツヤしている。)
     ランドセルに加え、くたびれた様子のタオルや洋服が詰め込まれた大きな紙袋を右手に持ち、左手には買い物のビニール袋を持っていた。まさたかの腕には多すぎる荷物に見える。
     いっこ持ってやろうか?って口から出かけた時に後ろから大きな声が被せられた。
    「あら、マサくん」
     俺のかーちゃんがちょうど家ん中から出てきた。
     俺んちはアパート一階の手前から二番目。まさたかんちはその向こうの一番奥だ。
    「あんたそれ晩ご飯?それしかないの?」
     かーちゃんはまさたかの左手に持っているビニール袋を見ながら言った。
     その袋は駅からうちまでの間にあるパン屋さんのやつだ。袋いっぱいに惣菜パンが入っているけど、ほとんどのかさをとっているのは食パンの隅っこがパンパンに詰まった大きなビニールだ。
     まさたかは「はい」と頷くと「パン屋のおばさんがおまけにくれた」と言った。
     それを聞いたかーちゃんは「待ってな」って言い残し家ん中に戻り、すぐ出てきた。
    「はい。うちにも大したもんないけど。肉と野菜も食べなきゃね!」
     そう言いながらバナナ1房と細長く6本で束になっているソーセージを持ってきた。
     俺はそのソーセージは魚でできてるってことを給食の時間に隣の席のやつに聞いたばかりだったので肉じゃないんじゃないかって思ったけど、美味しくて大好きだから何も言わなかった。まさたかがそのパンを何日かに分けて食うのも知っていたし。
    「りょうこさん、ありがとうございます」
     まさたかがぺこっとお辞儀して、みりん揚げの髪がまた揺れた。
    「慶、あんたもマサくんみたいに礼儀正しくすんのよ」
     そう言って背中をバシンと叩かれた。俺なんもしていねえじゃん。

     バナナと魚肉ソーセージを俺が持ち、まさたかの家に着いていく。玄関から覗いたまさたかんちは洗濯物のハンガーが椅子やテーブルに無理やり引っ掛けてあって、生乾きのような匂いがした。暗かった。
    俺たちのアパートはどう磨いたって綺麗にはなりようがないってかーちゃんよく言ってるけど、それでも俺と同じアパートとは思えないくらい、まさたかの家はいつもすっきり片付いていていい匂いがしたのに。

    二人でアパートの駐車場の車止めに座って魚肉ソーセージに齧り付く。
    まさたかは魔法のようにくるくるビニールを剥ぎ取ってぷるんと震えるピンク色に齧り付いているが、俺はどうやっても剥ける気配のない赤いビニールに早々に見切りをつけ、絞られた先っちょに齧り付いて捩り切った。
    ブチっとちぎれて反動で後ろに倒れそうになったちょうどにまさたかも口を開いた。
    「……けい。母さん、うち、帰れねえかもしんねえって」
    「え?どう言うことだよ。まだビョーキ治んねえの?」
     まさたかは地面の崩れたアスファルトの小石と目を合わせている。俺もつられて小石を見つめる。
    「けい、……俺、1人になっちまう」
     アスファルトにぽたりと黒いシミができた。
     ギョッとした。

    「まさたか!1人になんかなんねえよ!俺がいるじゃん!かーちゃんもいるし!」
     まさたかの両肩をグッと掴む。まさたかの目は夕陽のオレンジが入り込んで給食で一番人気のゼリーみたいにキラキラ潤んでいた。綺麗だけど、まさたかの悲しい顔は嫌だ。
    「俺と一緒にいたらいいんだよ!よっちゃん元気になるまで、ずっと一緒に待ってようぜ」
     悲しい顔が一刻も早く消えるように一生懸命言う。
    「……うん」
     おずおずと頷いたまさたかが、コテンと頭を俺の肩に乗せた。
     ゼリーの瞳は見えなくなったけど、ふわふわの髪と汗ばんだ匂いが鼻先を掠め、俺の心臓はまた、注いだばかりの炭酸ジュースみたいに泡泡になった。


     それから数ヶ月が経ってもよっちゃんは帰って来なくって、まさたかは学校帰りに時々病院へ寄っている。
     今日もそうするって言ってたから俺は公園寄ってから帰った。
     アパートの門柱まできたら大きな声がした。
    「誰だよ!帰れ!俺は行かない!」
     まさたかの声だ。びっくりして覗き込むとまさたかの家の扉の前に黒いスーツを着た大きな男が二人いる。俺でもわかる、三門にたくさんいるガラの悪い人間だ。まさたかは部屋の中にいるみたいだけど男はドアの中に腕を突っ込んでいる。よく見れば足でドアが閉まらないように抑えているようだ。
    「ちょ!何やってんだよ!」
     俺は思いっきり走ってまさたかを掴んでる男に体当たりした。
    「あ?邪魔すんなガキ」
     渾身の体当たりだったはずなのに、弾け飛んだのは俺だった。大男は微動だにしない。
    「けい!?大丈夫か!?離せ!離せよ!!」
     まさたかがこちらを覗き込むように顔を出し、そのまま引き摺り出された。
    「イッテェ!」
     しこたま背中を地面に打ちつけたが痛がっている場合ではない。
    「やめろ!まさたかを離せ!」
     男に向かって怒鳴るが無視される。もう一人の男がまさたかの顎を掴んで無理やり上を向かせた。
    「噂には聞いてたが生きうつしだな。この顔見りゃ誰もいちゃもんつけようがねえだろ」
    「ハ、こりゃ下手に傷つけらんねえな」
    男同士が下卑た顔でニヤニヤ笑う。
    「おい。お前の母ちゃん、もうすぐ死ぬんだろ?かわいそうにお前は1人ぼっちだ。俺たちが助けてやるって言ってんだよ」
    「……!!」
     まさたかは雷に打たれたような顔をした。
    「いいから黙ってついて来い。邪魔するガキなんかぶっ殺してもいいんだぜ?」
     そういうとこちらを見下げ俺の太腿を踏みつける。
    「うわああ!」
     重くて痛い。太腿が潰される恐怖に呻くことしかできない。
    「けい!やめろよ!けいは関係ないだろ!?」
    「そう思うんなら、大人しく俺たちについて来い。車に乗ったら説明してやるよ」
    「……。」
     まさたかはキッと男たちを見上げると「わかった」と言った。
    「よし、車に乗れ」
    「!!おい!まさたか……!!待てよ!」
     太腿に乗っていた足をどかされ必死に起き上がる。気丈に男達を睨んだまさたかの手は震えていた。
    「行くな!おい!!」
     そのままふらふらと殴り掛かろうとして振り払われ、再び吹っ飛んだ。
    「やめろ!行く!行くから!」
     まさたかは男達の腕を引くようにして俺から距離を取ろうとする。そのまま男達に挟まれてアパートの前に停まったでっかい黒い車に乗りこむ。
    「う、くそ!まさたか!まさたか‼︎」
     俺もガクガクと震えながら車に駆け寄る。
     ドアが締まる寸前、まさたかと目が合う。恐怖に震えた瞳、あの時のように潤んでいるがその色は俺の心臓を握りつぶした。
     車はすぐに走り出し、俺はアパートの前で項垂れ震え続けることしかできなかった。

     帰ってきた大人に俺はまさたかを探してくれって一生懸命訴えたけど。三門の街で黒塗りの男達に刃向かおうとするものはいない。
     翌日まさたかんちの荷物を全部運び出したおじさんにくってかかって、俺も一緒にまさたかんとこ運んでって頼んだけど、荷物は全部ゴミ集積場行きだって言われた。
     大人達は何かを察したようにまさたかのことを話題に出さなくなった。
     有耶無耶にされる気配を察した俺はその後の半年間、毎日三門中を自転車で走り回ってまさたかを探した。
     まさたかはどこにもいなかった。
     

     それから後は俺はグレにグレて、喧嘩ばっかして、いつの間にか腕っぷしなら誰にも負けないくらい強くなった。何度目かわかんねえくらいの補導の時に、なんでか俺に目をかけてくれるケーサツの忍田さんに言われた。
    「それだけ強いのに力の使い道がないんだったら警察官になれ」って。
     言われてすぐよぎったことは「ケーサツカンになったら、まさたかを見つけられるかもしれない」ってこと。
     三門の街では力がない奴は何もできない。あの真っ黒い奴らからまさたかを助けたい。あの日握りつぶされた心臓がドクドクと音を立てた。


     俺はどうしようもない馬鹿だけど、要領と勘だけは昔からいいんだ。
     警察官になってまさたかはすぐ見つかった。
     三門じゃ警察官の手はいくらあっても足りない。警察学校をギリギリで卒業したペーペーの俺でも数集め動員されることがある。
     三門市警の大会議室に映し出されたディスプレイには、みりん揚げ色のふわふわ頭が真っ黒いスーツをきて大写しになっていた。

    「滂沱会傘下二宮組新組長、二宮匡貴」
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