片想い遠くからでもよく目立つ赤い髪と赤と茶の瞳を持つ里の英雄と呼ばれる男。初めて会った時からどんな人にも態度は変わらず笑いながら軽く受け流している。そんな英雄の化けの皮を剥がしてみたかった。怖いと思うことがあるのだろうか、失敗してもそうやって取繕うのか、心の底から笑ってくれることはあるのだろうか。気づいた頃にはもう彼を目で追いかけていた。
今日は彼と部屋で飲む約束をしており側から見てもわかるほどそわそわしていることだろう。足が地に着かないとはまさにこのことだな。と、そこへ砦に帰宅した英雄とオトモたちを見かけ声をかける。
「君!今日は密林行ってきたんだよな!」
パッとオレの方を向いてニカっと笑う彼の笑顔は1日中外を駆け回っていたとは思えないくらい眩しく見えた。
「ああ!そうだぜ!ルートなかなか覚えられなくてな、、今日も探索だ」
夕日を背に彼のために国からあてがわれた個室へ一緒に向かう。こんな武器やあんな防具、話題は尽きることなく彼の部屋の前まできてしまった。もう後戻りはできない。ついに片想いの人の部屋へおじゃまするのだ。オレが入り渋っているとガルクに背中を押されてしまった。まるで今日ボクと遊んでくれる人が増えたとばかりに目をキラキラさせている。後でこの子においしいご飯をあげないといけないな。
…
「それでそこのルートに回るには…」
マップを見ながら効率の良い採取ルートや珍しい環境生物について酒を交わしながら話し合っていた。酔いはそれなりに回っており全部を全部開けなくてもいいかと思っていたのだが彼のペースに飲まれ気づいた頃には空いてない瓶は一本もなくなっていた。
「ほむらぁ、、」
君と言ういつもの呼び方など自分の中ではすっかり忘れさられこの来たばかりのハンターを面倒見なくてはと気持ちにかられていた。そのホムラはというとあぐらから体制を崩し幸せそうな顔で頭をかくかくんとしながら寝ているオトモたちを優しく撫でていた。自分はしっかりチェイサーを入れながら飲んでいたが彼にそこまで気を回せていなかったのか、と少し恥ずかしくなった。酔い潰そうだなんて思っていなかったためすぐにでも寝る支度をさせふかふかのベッドへ寝かせてあげなければと彼に手をのばす。その瞬間、彼は身体を捻り宙に半円をかきながら部屋のすみへ着地する。あの体制からどうやって、酔っぱらっているにしても目で追いきれない速さ、なんて素晴らしい瞬発力と危機管理能力などと関心していると半寝起きだったのかオレを赤い目で確認すると片膝を立てたままかくんと頭を落としてしまった。すー、すーと鼻息が聞こえてくるがそんな彼をそのままにできず再度彼に近づく。
「君、ほら。立って。ベッドで寝た方がいいだろ。」
オレはとっくに酒気を抜かれ彼を寝かしつけるべくガっと抱き抱える。彼は先ほどオレだと確認したためか抵抗など一切なくされるがままだ。片想いしてる人の無防備な姿なんて据え膳以外の何ものでもなく現にオレのオレは緩く勃ちあがっている。意識を手放してもいい人物だと認識されていることに高揚感を抱くくらいは許してほしい。誰に対して言う訳でも無いが許しを乞うた。
「よし、着いたぞ。よっと、、」
彼をベッドに座らせ横にさせようとした瞬間、彼の双方の違う瞳とかち合った。
「…ん、うなばら」
先ほど部屋のすみで見た彼の鋭い瞳とはうって変わり、上目遣いのとろんとした目でオレを見てくる。そのまま彼はくぐもった愚図るような声と共にオレを横倒しにしてきた。
「え!?ちょ、、き!きみ!!」
臨時体制になりつつある男のことを押し倒すなんてさっきの警戒心はどこにいったんだ?!心の中で叫ぶも状況は一才変わらない。というよりも彼はオレの温もりが欲しかったようだ。
「………んん……あたたか…い」
規則正しい呼吸と心臓の音。2人で向き合って横になるには充分な広さなのだが、オレのオレは大きく脈を打ち背中は汗でぐっちょりと濡れ緊張で手は少し震えている。彼の手はオレの背中に回され足も絡まされ、行き場を失ったオレの腕は小さく収納され彼の胸部に密着するような形になってしまった。間違いがあってはいけないので手はもちろんグーにしてなるべく接触しないように刺激しないように心がけていた。こんなに距離が近くてはさすがに自慰はできないし目の前にいるのは尊敬と片想いがごちゃまぜになった人でそんな人の前で粗相なんてしたくないし、ましてや彼の睡眠を邪魔したくない。鬼の心で常時ではお目にかかれない彼の寝顔を焼き付けておこうと努力した結果、日の光が入り始めた頃ようやっと眠気が来て目を閉じることができた。
追記
このウナバラくん後日、ホムラホムラて言いながら自分のシゴいては尊敬する人に対する罪悪感と想い人を意識しながら射精できる幸福感に板挟みにされて悩んでほしいな。もちろんホムラはそんなこと知ったこっちゃないし、これからもホムラはいろんな人を自室に呼ぶ。ウナバラくんかわいいね。