Silver Knife銀のナイフ
ずっと、広い屋敷の狭い鳥籠に飼われていた。
餌は、豆。
床板から柵に至るまで、全て海楼石の練り込まれた特注の籠は金で作られていて。鎖にこそ繋がれてはいなかったが、ずっと自分でも生きているのか死んでいるのか分からなくなる境界をゆらゆらと漂っていて。
時折、余興という下らない名目の為に血を流す度、与えられる痛みにそういえば生きているのだとぼんやり思い返したりしてもいた。
人間の心は、身体よりも先に死んでいく。後になってから理解した。
─── おまえ、生きていてぇか?
その言葉も、ただぼんやりと聞いていた。
漠然と、屋敷の中で繰り広げられる一方的な暴力を多分床板に伏せったまま眺めていたので、視界は正しくは真横になっていたかと思われる。差し出される掌が、自分に差し出されているのも不思議で、大きな男が口にした言葉も不思議で。次にその刃物が向けられるのは自分だと思っていただけに、言葉も出て来なかった。
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