天気予報は見ていた。それでもクラージィ宅の訪問を決めたのはノースディンで、部屋で過ごす他愛ない時間を引き伸ばしていたのはクラージィだった。夜明けが近くなってきている。
雨が降り始めたのは二人ともわかっていた。ノースディンは慌てる様子を見せたつもりはなかったが、クラージィは、窓外をさりげなく気にしつつ、新たな話の接ぎ穂を示して、帰宅を促すことはなかった。その仕草に、胸の内は穏やかなもので満ち、ノースディンは知らぬふりでクラージィとの時間に浸る。
唐突に、ざっ、と音がした。雨音だ。
思わず二人で窓に顔を向ける。どうどうという音の響きにクラージィが窓の外を見に行き、ノースディンも彼と並んで覗いてみた。
6355