はち番出口で会いましょう。 乱数、『8番出口』というものを知っていますか。
いえね、どうも最近流行りの都市伝説、といったもののようなのですが。所謂きさらぎ駅とか、異世界エレベーターとか、そんな類の。
まあ、怖い話では、あるのですかね。いえいえ、そう怯えずとも、そこまで恐ろしいものでもないのですよ。
ただある日、突然『8番出口』という場所に迷い込んでしまうことがあるのだそうです。それは駅の地下通路によく似ているのですが、同じ光景が無限に続いており、特別な手順を踏まないと外に出ることができないそうです。
特別な手順が何かって? それはですね──。
* * *
気がつくと、異様に白い空間にいた。
駅の地下通路、のような場所だろうか。全面がタイル張りの白い壁で覆われていて、右側には関係者用の出入口らしきものが三つに、通気口がふたつ、奥の方には消火栓。左側にはなんの変哲もないポスターが、一、二、三──全部で六枚。天井には白々煌々とした蛍光灯が一定間隔で並び、通路の中央あたりには黄色い「↑出口8」と描かれた横看板が吊られている。隅の方にぽつんとある出っ張りは、監視カメラか何かだろうか。足元から通路の奥まで続く黄色い太線は点字ブロックらしく、微妙に立ち心地の悪さを感じて乱数は足をのける。
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