ピアスを開け合うたいみつ「そのピアスにこだわりでもあんのか」
上質なソファの上でオレを押し倒した大寿くんが『そのピアス』として指差したのは、オレが中学の頃からつけ続けている十字架模様の黒いピアスであった。大寿くんの手が伸びてきて、右手の親指と人差し指でピアスをつまみ、耳たぶの裏に飛び出したキャッチを転がす。その手つきがやたらにいやらしかったので、オレは無駄に厚い大寿くんの胸板を両手で押し返した。
「大寿くん、触り方がやらしいぞ」
「今からやらしいことすんだから構わねぇだろ」
「そりゃそうなんだけど……」
「さっさと質問に答えろ。ずっとつけ続けてるよな、コレ」
再びその大きな指の腹で耳たぶをなぞられ、思わず身震いした。背中がぞわぞわと毛羽立つような感覚。誰かに触れられて思わず身体が震えてしまうことに「気持ちいい」という答えをくれたのは大寿くんだ。だからこれはくすぐったいんじゃなくて、気持ちのいいこと。漏れそうになる声をどうにか抑えながら、共に人生を歩んできた左耳のピアスに想いを馳せる。
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