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    しんや

    @4ny1crd

    らくがき、ログ、まとめます

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    しんや

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    吉日/卒業後~恋人同士になった後の妄想。ありきたりな未来話。

    ふたりへのお題ったー【https://shindanmaker.com/122300】からお題を拝借? 100コル当時?(2013年3月頃…?)に書いて、2ffプレイ後に少し修正したもの。

    ##吉日

    アンバランス、ベストポジション 食事を終えて店を後にし、ドライブをしながら彼女と帰路を行く――その最中、吉羅は彼女の様子が普段と違うことに気が付いた。
    「今日の食事は口に合わなかったかね? 君はイタリアンが嫌いではなかったように記憶していたが」
    「えっ……そ、そんなことないです! すごく、美味しかったです」
     続けて、笑顔で感謝の言葉を述べる。その笑顔がどこか無理をしているように見えて、吉羅は路肩に車を停めた。
    「その割には浮かない表情をしている。私に何か不満があったなら言ってくれ。改善するよう善処しよう」
     そう言うと、香穂子は違う、と言いたげに首を横に振った。
    「そうじゃないんです、不満があるわけじゃなくて……私が、暁彦さんの隣にいることが、不釣合いなんじゃないかって」
    「どういうことだね?」
    「一緒にいても、年の離れた兄弟――とか、そういう風に見られているんだろうなって、そう思ったら、私がもっと大人だったらって思わずにいられなくて」
     あぁ、と思い出す。そういえば店を後にした時、ちょうど同年代の知り合いがやってくるところに鉢合わせ、挨拶を交わした。年の離れた香穂子を見て、彼らは吉羅を「隅に置けないやつだ」とからかっていた。
    「彼らの言葉のことなら気にする必要はない。それに君は十分、大人の女性だ」
    「そんなことは――」
     身を乗り出し、否定を言いかけた香穂子の唇に自分の唇を重ねる。それだけでは終わらない。下唇を舐め彼女が口を開きかけた瞬間に逃さず、吉羅は舌を入れる。途端に彼女は離れようと吉羅の胸を押すが、いつの間にか回された手が、腕が、香穂子の体の自由を奪っていた。深くなっていく口づけに香穂子は翻弄され――吉羅に味わいつくされて解放される頃にはくたり、と彼の胸に自ら身を預けてしまっていた。
     言いたい言葉は山ほどあるのに、香穂子は呼吸をするだけで精一杯。どくどくと早鐘を打つ心臓が壊れてしまうのではないか、と心配になった。それを口にすれば、ふっ、と頭上で笑みを漏らす声が聞こえた。
    「嬉しいことを言ってくれるね」
     吉羅はうつむいていた香穂子の顎に指を添え、顔を上げさせる。
    「君は出会った頃よりも一段と綺麗になった。こんな風に艶っぽい表情をするようになったのに、まだ大人ではないと言うつもりかね?」
     彼女の顔を覗き込めば、うるんだ瞳には再びキスされるのかという期待と不安が入り混じった様が見て取れた。そんな目に吸い込まれるようにもう一度唇を重ねる。今度は触れるだけの優しいキスだ。
    「君が大人ではない、というならば、私も君が思っているよりも大人ではない。なんせ、こんな場所でも我慢ができず、君にキスをしてしまう程だから――まあ、君がもっと大人になりたいというのなら、」
     手伝いをするのはやぶさかではないよ?
     先ほど吉羅は香穂子に対し、艶っぽい表情、と形容したが、吉羅自身も同じように情熱をたたえた瞳をしていることに、彼は気が付いているのだろうか。香穂子は言葉で答える代わりに吉羅の首に手を回し、自らキスをねだった。今度は香穂子の方から口を開き、舌を差し出す。されたいのならば君からも、とは、恋人同士になってから吉羅から教えられたことのひとつだ。互いの舌を絡ませ、味わう。どちらからともなく唇を離すと二人は見つめ合った。
    「覚えておくといい。私の助手席には君しか乗せない。君以外の誰かが隣にいる未来は、もう私には描くことができないのだよ」
    「暁彦、さん……」
     熱っぽい瞳が語りかけてくる。目は口ほどに物を言うというがこれほどまでに吉羅を煽る瞳は彼自身、今まで出会ったことがなかった。多くの人間から慕われる香穂子を手に入れられたことは奇跡といえる。このまま彼女を押し倒してしまいたい衝動にかられたが――
    「――さて、そろそろ出発しようか」
    「……え?」
     首に巻き付いた彼女の腕を離し、吉羅は何事もなかったかのように前に向き直ると、ハンドルを握った。
    「申し訳ないが、いつまでも車を停めておくわけにもいかないからね」
    「あっ」
     今更ながら場所を再認識したのか、「そうですね」とぎこちなく言うと、乱れかけていた身なりを整えながら、赤くなった顔を隠すようにうつむいた。吉羅はその様子に目を細めて意地悪く微笑みを浮かべる。先ほどまでキスをねだっていたくせに、と口にすれば、彼女はまた艶っぽい視線を投げかけてくるだろうが、そうなれば今度こそ、自制が利かなくなりそうなので心にしまっておいた。
    「君の期待には、家に帰ってからじっくりと応えるとしよう」
     時間をかけて、ね。
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