生足魅惑の酔っぱらい春の西風が俺たちを刺激する。セシリアの花の香に紛れたアルコール臭がモンド人の魂を揺らす今日この頃、モンドには露出狂が現れる。
俺はモンド人のはずだが、この光景を見る度に自身のアイデンティティに自信が無くなる。もう、慣れたものだ。
春の風物詩、酒に溺れた本能が暴れ出すのは、いつだって葉も空も碧々とした季節で、日差しも眩しい。夏はもっと清らかなものだと信じていた、幼い自分を羨んだ。
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肌色の四つの手足が生えた、肉の塊は狂った旋律を口ずさみながらモンドの城下町を駆け下りる。駆け下りると言うより、時々つんのめって転がっていくので、ボールみたいだ。恐らく、その酒臭い口から奏でているのは、教会でよく使われる聖歌だと思われる。さぞ、風神も喜んでいるだろう。人間の姿は保って居るので、やんちゃなモンド人に違いは無い。酔った体で細い路地に入っても、コーナーを綺麗に走りきる脚力には感服だ。意外と追いつけない。正門から脱走していくのを止められず、小さな溜息をつきながら見守る。
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