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    blue_hair_tofu

    @blue_hair_tofu

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    blue_hair_tofu

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    ※気をつけろ!!自己解釈や幻覚がたっぷりだ!!解釈違いだったらすぐに閉じて全部忘れてくれ!!
    モブも喋るよ

    腕吹っ飛ばされた直後ヒュおじ

    右腕長年奪い合いをしてきたそのグレネードはあっけなく爆ぜた。ピンを抜けば中身が炸裂する、そういう代物なので別におかしいことでは無い。こんな別れ方など誰も望まないだろう。まして物心ついた時から共に無茶をしてきた幼馴染だ。既に自身は事件の中心にあった建物から離れている。向かうのは傭兵をやっていた頃から世話に……いや迷惑をかけてきた馴染みの医者のところだ。そう、今の俺は死に向かって全力疾走しているようなものだ。右腕のあった所から流れる血を止める術は己に備わっていない。次第に自覚し始めた痛覚に脂汗が浮かぶ。視界と足元が揺らいでいくことに悪態をつく。ここは一応マギーの縄張りだから、小悪党みたいなのはビビって近づいて来ない。途中で誰とも出くわさなかったのは幸運だ。通りを避け埃っぽい路地を抜け、上がる息を噛み殺してとある階段を下る。半地下になっているドアを力任せに殴りつける。ここの主の暴言が飛んで来るが構わず再度叩く。その度に反動で意識が崩れかける。ようやく顔を出した医者は途端に形相を変え即座に入れと言う。そりゃあそうだろう。人体のパーツが1つ丸ごと無くなっていているわ、赤黒い液体が服や床をすっかり染め上げているわ。
    医者は仮眠していた部下を叩き起こすと輸血パックや刃物やら器具がごちゃごちゃ用意する。俺はと言うと簡易の手術台に乱暴に乗せられた。準備が整うまでの間、目を覚ませだとか言われて頬を何度かぶたれた気がする。意識はあると言っているはずなのに後で文句を言ってやる。麻酔はここに来てすぐに打たれたが、それが効き始めるのを待っていたら血が無くなって干からびる。止血の処置が強行される。背筋に重く粘度の高い冷たさが走ると同時に熱が右肩で爆ぜて暴れ回る。直前に噛まされた布切れを食いちぎる勢いで激痛に吠えた。反射的に跳ね上がる残りの手足を助手たちに押さえつけられる。不幸にも痛みに慣れているこの体では気絶することが叶わない。
    やっと麻酔が効き始める頃には喉が潰れているのではないかと思ったぐらいだ。薬と疲労で頭がぼやけている。由来のよくわからない天井のシミを眺めていると視界に医者の顔が割り込む。
    「よぉ腕はどこに失くした?」
    「知らねぇよ。どのみちここにあるポンコツ設備じゃくっつけられねぇだろ」
    「その話じゃねぇ。骨だけ残してイカしたトロフィーにするんだよ。店先に置きゃぁ、あのウォーリーの腕だって客がわんさかだ」
    「おい人のモンを見世物にするんじゃねぇぞこのヤブ医者!わざとやったんだろ?クソ痛かったぞこの野郎」
    「注目を集めるのは得意だし好きだろ?!せっかく助けてやったのに。知り合いの腕の良い義肢装具士、紹介してやらねぇぞ」
    そう言っておきながら紹介状が挟まれたバインダーを俺の頭の脇に放る。悪趣味な冗談は昔からのものだ。初めて会った時からそうだったが、何処でこんな怪我をしたのか一切触れて来ないこの男に感謝した。
    「これからもっとでけぇドンパチに行く男がいつまでもこんな所にいるんじゃねぇ。とっとと出ていきな」
    「わーってる。おめぇがうるせぇから休まらねぇ。少ししたら義手を探しに行く」
    それを聞いた男は悪態を何個かつきつつ他の連中も引き連れてさっさといなくなった。今は部屋に独りだ。上体を起こし、右側の重さが無いことに舌打ちする。マギーの放ったあのグレネードは今までの関係が終わったとハッキリ告宣した。……柄にもなく顔を覆った。腕一本分で済ませられるなら、この視界を遮っている方も持っていけば良かったものを!俺たちが過ごして来た時間はその程度のものじゃないだろうが?頭の内側から何かがせり上がって溢れそうだ。怒りにも似ているが、そんな単純なものじゃない。
    「マギー、お前の気持ちが分からねぇ訳じゃない。お前のやりたいようにやればいいさ。もう片方だってくれてやる。でも俺にも俺の望むもんがある」
    口の中で呟く。紹介状を懐に仕舞い、処置の為に剥ぎ取られていた上着を羽織る。早いところ代わりの腕を手に入れねばならない。
    「いつも通り後払いだドク!」
    階段を駆け上がりながら叫ぶと部屋の奥からバタバタと音がした。
    「馬鹿野郎!出てけとは行ったが早すぎるぞ!傷が開いちまう」
    何か呼び止めるような単語が聞こえた気がしたが気にしない。麻酔は肉体の感覚を誤魔化す。でも心の方はどうにもならない。傷口以外に痛むものを無視した。もう止まってはいられないのだ。進むしかないのだ。
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