旅先で出会う① 都会の蝉もよく鳴くもんだと思っていたが、ここの比じゃないなと駅から歩いて宇髄は思った。
スマホの地図アプリで、目当ての建物を見つける。古風な2階建てで、宿には見えず普通の民家のようだ。インターフォンを探したが見当たらないので、もう一度住所を確認し、声をかけながら引戸を開ける。
ガラガラとサザエさん家の玄関の音がして感動する。
「こんちはー」
「はーい」
タタッと軽やかな足音がして、廊下の奥から人が出てくる。和服美人を期待したが、ド派手な金髪の男。スポーツでもやっているのか、宇髄ほどではないが、がたいのいい男。
玄関に膝を着いてにこりと笑う。
「ご予約のマツモトさんでしょうか?」
「はい。予約はマツモトで、俺は連れの宇髄です」
2972