最近天使を見たと噂が流れている
かと思えばそれは悪魔だと言うものもいた
どちらが正しいかは分からないが村の者は皆教会へ足を運び壮年の牧師に話す
白く美しい天使だった、いやいや赤い角が生えていたアレは悪魔だ、様々な目撃情報に今にも喧嘩が始まりそうだった
そんな人々を止める声が響く
「どちらであれ、ここは神に祈りを捧げるところですよ」
争うのはおやめなさい、と静かに宥めた
その通る声と美しい顔に言い合っていたもの達は口を噤み謝る
「すみません牧師様」
「いいえ、分かっていただけたのならいいのです」
にこやかに微笑むその顔は後光が射しているかの如く輝き人々は手を合わせて拝んだ。その姿に困ったように目尻の皺を濃くさせて、祈りましょうと告げれば先程の言い合いが嘘だったかのように人々が祈りを捧げ始めた。
6987