チョコレイト、というものが南の大陸から伝わって来て数年。ユーリスはいち早くその菓子の可能性に目をつけて、自ら南方の商人と交渉を始めた。現地では加工に手間がかかるためいまいち有難がられていない植物だったが、一部では薬のような扱いをされていたとかいないとか。最初こそ高価な食べ物だったチョコレイトも、今では庶民が楽しむこともできるものとなった。薄く伸ばして固めただけでなく、生クリームと合わせたり、焼き菓子に混ぜたり飾りにしたり……その可能性は無限大だ。体温程度でとろっととろけてしまうその口どけが好きらしく、ユーリスがチョコレイトを摘まんでいる姿は日常のものとなっている。もちろん、ベレトとのティータイムにも、お茶の隣にチョコレイトが添えられていることがままある。ベレトもちょっと遠方まで足を伸ばした土産に、可愛らしい形をしたチョコレイトを買って帰った。綺麗な箱に入れられていたそれをユーリスは大層喜んで、しばらく飾って眺めていたくらいだ。
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