お題「約束」「よく似合っている」
青色のスリーピーススーツを身にまとった男を前に、御剣は目尻を下げて感嘆の言葉をこぼした。試着室には気恥ずかしげな様子の男が一人、居心地悪そうに佇んでいる。
「僕は別に、7年前のスーツでも…」
「何腑抜けたことを言っている。キミももう部下を持つ立場なのだぞ。身なりにも気を使いたまえ」
「だったら尚更あのスーツでも良いだろ。既製品だけどぼくの一張羅だったんだぞ?そんな安物じゃなかったはずだし」
「金のことなら心配しなくて良いと言っているではないか」
「だからやめとこうって言ってるんだよぼくは」
しばし睨み合いが続き、試着室の男──成歩堂がため息を吐く。このままでは議論は平行線のまま、ここは自分が折れるしかないと思ったのだろう。今日も見事にとんがった頭をポリポリ搔きながら申し訳なさそうな様子で御剣を窺う。
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