🍞屋マゼとリーマンヴェ🍞屋の店休日とヴェの休みが重なって、丁度新作の試作するから店に来ないかと誘われて、いそいそとお邪魔するヴェ。
リリは友達と約束があって不在（めーっちゃ悔しがっていた）、ご両親も久々に水入らずデートで外出中。
そんな休日に、試作だなんてお前さん真面目だなって感心したら、週休二日のはずなのに月休３日とかやっちゃってる人に言われてもねーと笑いながらチクリチクリ。
最近はちゃんと休むようにしてる、と目をそらして口先を尖らせるヴェを、仕方ない人だなぁって思いながらその口摘まみたい（言葉通り）とか思って指先もぞもぞさせるマゼ。
さて、と気を取り直してさかさか調理台の上に材料を出して、やりますか、と袖をまくって小麦粉の山をざざっと整形するマゼ。

恋というには遅すぎる先の見えない闇から救い上げ、柔らな笑顔で居所を用意してくれたその方は常に賑やかな声を周囲に纏う。
なにより自由を愛する方だから、傍に侍りたいなどという浅ましい欲を述べることなどできはしない。
恋というには遅すぎる。愛というには重すぎる。これを顕せる言葉を私は寡聞にして知らないのだ。

勇者の夢　この勇者には、ヴェルナーという、とても大切な貴族の親友がいて、ことある毎に、その親友の話ばかりしてくる。
「貴族だけど、平民の僕に対しても気さくに接してくれて、すごく頭が良くて、強くて、格好良いんだ。王都の学園に通っている時も何度も助けてくれた。彼がいなかったら、ここに僕はいない」
　目をキラキラさせながら、大好きな親友のことを褒めまくる。
　本当は一緒に旅をしたかったけど、「俺の力量では、お前の足手まといになる」と断られたと肩を落としていた。
「そのかわり、お前が戻る場所は俺が守る。だからお前は心置きなく旅に出ろ」
　そう言って勇者を送り出し、国に残ったそうだ。
「僕の夢はね、魔王を倒して国に帰って、平和になった世界で、またヴェルナーと一緒に王都の学園に通うことなんだ」