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    7147 ピアスの話①

    ピアスの話①母さんが電話をしていた。泣いていた。
    涙は出ていなかったが。

    ソーちゃんは泳いで別の島で暮らしているのだとばあちゃんが言った。
    心臓が強く跳ね、その日は眠れなかった。





    バスケ雑誌を開くと、ページの間から髪の毛が足もとに落ちた。
    ツンとまっすぐな短い毛。人差し指と親指でつまみ、手の甲をつついてみる。
    ソーちゃんの頭を触ったときの感覚がした。


    あ そうだ 


    自分の部屋へ戻り、小学校の頃に使っていた名札を引っ張り出す。
    安全ピンを外し、捻じ曲げた針の先を左の耳たぶに置いた。

    いつかの縁日で買ったピアス。
    大人になったら付けようと、隠れて買ったピアス。


    俺たちは特別なんだ。


    けれど宮城ソータはもういない。
    少なくともここには。

    宮城ソータはもういない。

    宮城ソータはいない。

    宮城ソータは。

    ソーちゃん。



    脳裏が白くはじけ、針が俺の中を通っていくのが分かる。
    頭は別の世界にいるようだった。

    ここならソーちゃんがいるかもしれない。
    ここにはいなくても、ここになら。

    開いた穴にピアスの針を通してふたをする。
    ふたをしても血は止まらなかったが、閉じ込めた。


    俺たちは特別なんだ。


    顔を左に向けてみる。血が左腕を伝ってぼたぼたと床に落ちた。





    「宮城」

    名前を呼ばれて木の天井が目に入る。

    「三井サン?どうしたんスか」
    「お前大丈夫かよ。汗すげーぞ」
    「え?・・・うわ」

    体を起こして顔を拭う。どこもかしこも濡れていた。
    三井サンが右手の人差し指を口にあて、左手の親指は部屋の出口へ向ける。
    花道たちが寝静まる部屋を後にした。

    自動販売機にあるポカリスエットのボタンを三井サンが押す。
    出てきたものを手渡された。

    「おごりっスか。先輩やさしーな」
    「3倍にして返せよ」
    「ですよねぇ」

    続けてなにかのボタンを押し、出てきたものを飲んでいた。

    「聞きたいっスか?」
    「言いてーなら聞くけど、俺にアドバイス的なのは期待すんなよ」
    「普段は土足でずかずか入ってくるくせに」
    「なんか言ったかこの野郎」

    自動販売機からウーという音が出る。
    ポカリスエットはうまい。

    「ねえ、知ってます?ピアス開けるときってむちゃくちゃ血が出るんですよ」
    「うぇ、俺ぜってー開けらんねえ」
    「やるなら開けてあげますよ」
    「右耳に開けて、お前と左右合わせるか!」
    「げっ、やですよ。気持ちわりー」

    三井サンが笑う。

    「気を抜くと膿むし、ほっとくと穴が閉じちまうから、こー見えて結構大変で」
    「ならもう閉じちまえよ」
    「閉じたらいいんスけどね」

    変なことを言ったつもりはなかった。
    けれど閉じると言ったそばから、まるで閉じないような言い方はどう考えてもおかしい。

    「あの、違います。言葉のあやで。すんません」

    自動販売機の光が眩しい。ウーという音があたりに響く。
    何をこんなに動揺してるんだろう。

    「あ」

    三井サンの指がピアスのついた耳たぶに触れる。

    「穴みして」

    聞きなれない言葉で妙な気分になる。
    ピアスキャッチを外し、針を抜いた。

    「お~。あいてら」

    俺の耳たぶをぷにぷにと触り、親指の爪で穴を軽くほじくられる。
    穴を閉じるように親指と人差し指で挟まれた。

    「閉じろ~閉じろゴマ」
    「はー?俺のピアスホールに宝を隠さないでくださいよ」

    挟んだまま、もにもにと揉まれる。
    そーいやあのときもこんな顔してた。

    「ほんと物好きっスね」
    「あ?なんて?」
    「耳詰まってます?開けぇ~ゴマッ」

    三井サンの両耳を外側に軽く引っ張る。
    自動販売機の光が反射した三井サンの顔は、笑ったまま眉間にしわが寄った。

    「てめえ、勝手に開けんな」
    「オープンセサミ~。うーわ、なーんも入ってねー」
    「んだとコラ!」

    耳を引っ張り合ってるうちに、二人してソファへ倒れこんだ。



    うなされていると思えば、素知らぬ顔で平然とポカリを飲んでいる。
    今はソファの上で糸が切れたように寝ていた。

    「おい、宮城。宮城?」

    頬を軽く叩くが起きない。このまま放って風邪でもひかれたら困る。
    机の上にあるピアスをポッケに入れ、宮城を両脇から抱え上げた。

    自分より小さいから余裕だと思っていたが、案外ふらつく自分が情けない。
    宮城は耳元で寝息を立てている。人の気も知らねーで。

    あー。誰か起きてこねーかな。赤木とか赤木とか赤木とか。

    考えているうちに、気づけば布団に着いていた。
    寝ている間にピアスを戻すか考えたが、最中に動かれて大惨事になる未来が頭をよぎり、そのまま寝ることにした。



    「宮城」

    洗面台に向かう途中で背後から声をかけられる。
    振り向くと、三井サンが俺のピアスを差し出す。そういえば外したんだったな。

    「あ・・・。もしかして俺のこと布団まで運んでくれました?」
    「まあな」
    「すんません」
    「3倍にして返せよ」

    金はともかく、運ぶのはどう3倍にすんだよ。
    ピアスを受け取ろうとして、なんとなくやめた。

    「ん」
    「あ?」

    かわりに左耳を突き出す。

    「三井サンが隠し持ってたんだから、ん」
    「お前な・・・昨日俺がどんだけ頑張ったか・・・」
    「無くしたんじゃないかと思って焦ったんスよね」

    前に自分がしたことをまだ気にしているのか、案外ゴネると折れてくれる。
    三井サンはしぶしぶという顔でピアスキャッチを外した。

    「痛かったら言えよ」

    俺はあんたの彼女かよ。
    ピアスの針がゆっくり耳たぶの穴に通り、ふたをされる。

    「ふー・・・。さぶいぼがやべぇ。これでいいのかよ」
    「あー、だいじょぶそう」
    「やっぱこっちのがお前っぽいな」

    「ん」

    しまった。

    「あ?んだよ。言いたいことがあるなら言え」
    「なんでもねーです」
    「おめーの眉毛が言いたげなんだよ!」
    「なんでもねーって。しつけーな、あんたはどんだけ俺の眉毛が好きなんだよ!」
    「あーあ!あのまま放っときゃよかったぜ!」

    ぶつくさ独り言を言いながら、足を大げさに動かす三井サンが前を歩いていく。
    なんでもない顔でピアスキャッチを強く押し込んだ。
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