ここから「一緒に泳げる」
そう言いながら緩やかな坂を駆け上がる。体に疲れは全く感じなかった。
一秒でもはやく会いたかった。
「俺も水泳をやる」
そう伝えたらあの子はどんな顔をするだろう。また笑ってくれるかもしれない。
こんなに誰かに会いたいと思ったのは初めてだった。
目覚めは深い溜息と共に訪れる。
時間をみれば午前四時、夜とも朝とも付かない時間だ。
「こんなところに来てまでコレかよ……」
寝巻きに使用しているタンクトップの上に学校名が入った上着を羽織る。まだ眠っていたかったが夢のつづきを見たくなくて部屋からでる。安直だが外の空気を吸うのは有効な手段だった。
誰もいない廊下もエレベーターもひどく静かだ。こんな時間に起きている宿泊客はほとんどいないだろう。
1965