「じゃあ、挿れちゃうよ、ヒバサおにいちゃん♡」
「ゔッ……♡ あ、ああ……ッ♡」
挿れちゃうよ、という言葉には、二つの意味があった。目の前にいる男の尻に、一物を挿入するという意味と、背後から抱きかかえてくる男の一物が、自分の尻の中に入ってくるという意味である。
こんなことをされたら、馬鹿になってしまう。搾り取るような穴の具合だけでも、すぐに達してしまわないように耐えなければならないのに、ぐずぐずに解された穴を拡げられて、太いもので埋められるのは、たまらなかった。下半身が快感で蕩けて、どうなっているのかわからなくなる。
「ふふっ……もうイッちゃったんだ……かわいい♡」
だいぶ年下の男相手に、挿れただけで達したのかと笑われるのは屈辱的だった。それでも萎えないのは、悔しかったからか、彼らが与えてくる感覚が、気持ち良すぎるせいなのか。きっと、どちらも、だと思った。
これは断じて、自分で望んだことではなかった。考えてもみて欲しい。ほとんど接点がなかった双子と、久しぶりに出会って、いきなり三人でまぐわうことになるなんて、誰が想像出来るだろう。
半ば無理やり寝所に連れ込まれ、服を剥ぎ取られ、体を弄られて、勃起せずにいられる方がおかしい。抵抗なんて、二人の現役ハンターに前後を固められては、するだけ無駄というものだ。
きっかけは、二人をウツシ教官から紹介されたことに始まる。見た目がそっくりな二人は双子の兄弟で、ウツシ教官の愛弟子であり、里自慢のハンターだと言う。
無愛想な二人に、よろしく、と挨拶をされ、よければ俺たちの装備も見て欲しい、ついでに外の話を聞かせてくれたら嬉しい、だなんだと頼まれて、気を良くして、のこのこと彼らの家を訪れたのが運の尽きだった。
彼らが用意した素朴ながらも懐かしい味わいの料理と、上等な酒を散々飲まされ、気分を良くしたところで、彼らは、耳障りの良い言葉で俺を誘惑した。
ああ、だいぶ酔っているようですね。今日は泊まって行ってください。布団は用意してありますから。さあさ、服を脱いでください。着替えはお貸しします――。
なんて、すっかり彼らの言うことに流されて、寝所へ行こうと立ち上がったところで、ぐいと腕を取られ、そして、この有様という訳だ。
「みんなのアニキ、なんでしょう。俺たちとも遊んでくれますよね」
「ああ、思った通り、イイ体をしてますね……これは、楽しめそうだ」
酔っているせいで、どちらがどちらかはもう、わからなかった。彼らの好きなように体を開かれ、そして、前後から休む間もなく責められて、今が何時かも、もう、わからない。
「お゙ッ……あ゙……あ……ッ♡」
腹の奥で何度目かわからない絶頂を感じ、がくがくと腰を痙攣させながら、だらだらと勢いの無い射精をする。
「あらら……さすがみんなのアニキ、後ろでも上手にイけるんだねえ」
正常位で自分を組み敷いている方が、汗に濡れた前髪を掻き上げながら言う。それを聞いて、何それ、みんなのアニキとか関係ないじゃん、と、片割れがお猪口を片手にけらけら笑った。こいつら……。
三人で繋がったのは最初だけだった。尻だけで達しているのを知られると、二人に代わる代わる貫かれ、尻の穴の感覚がおかしくなっていった。抜かれても、もう、閉じているのか、開いているのかもわからない。
「まだイける? イけるよね? みんなのアニキだもんねえ……♡」
訳のわからない理屈を言いながら、さっきまでお猪口を手にしていた男が、こちらへとにじり寄ってくる。
「ほら、こっちはまだまだ満足してないんだから……みんなのアニキには、もうちょっと頑張ってもらわなくちゃ、ね……」
萎えた一物を乱暴に扱きながら、男は妖しく笑って、こちらに向かってふうっと酒臭い息を吹きかけた。こいつらは本当に……とんでもないやつらだ。このままでは、里にいる間じゅう、こいつらの玩具にされてしまう。
一晩だけで、枯れ果てるような目に遭っているのだから、これが続いたらと思うと、目の前が真っ暗になりそうだった。明日になったらモンジュに声をかけて、またすぐにでも旅に出よう、と相談しなければ……。
「なぁに考えてるの? まだ余裕なのかな……?」
「ヒッ……ンッ、あ、やめ……んお゙ッ♡」
奥の、入ってはいけないところに突き込まれ、汚い喘ぎ声が出た。目の前がちかちかして、うまく息が出来ない。
「俺はまだイッてないんだよなぁ……余裕そうだから、ちょっと激しくするよ」
「やっ、やだ、許し……っく、あ゙あ゙ッ……♡」
奥をごつごつと突かれながら、腹の上の半勃ちになったものを扱かれて、言葉にならない喘ぎを漏らすことしか出来なくなる。もう駄目だ。何も、まともなことを考えられない――。
翌朝。目を覚ますと、綺麗な布団の上だった。昨晩の出来事が嘘のように身ぎれいにされ、情事の名残も何もなく、部屋も綺麗さっぱり片付けられている。
「おはようございます、ヒバサさん」
「ご飯食べていきますよね。もう少しで出来ますよ」
飯の炊ける匂いと、味噌汁の匂い。囲炉裏では、魚の干物がぱちぱちと音を立てながら、香ばしく焼けている。二人の態度も、楽しく酒を飲んでいた時と同じ、穏やかなものだった。あれは酔って見た夢、だったのか……?
「昨日は楽しかったですね」
「また、一緒に飲みましょう」
そう言って柔らかく微笑む二人に対して、頷くことは、どうしても、出来なかった。
おしまい。