もう少しだけ……---
君と、旅したかったな。
一瞬という文字通りの有様に、は、と目を見開き、思わず席から立ち上がってみても、もうそこには、大切な友人はいなかった。
友人ばかりか、あたりを見回せば、あんなにもたくさんいた乗客は、一人もいない。
「……っなんだよ。」
はあ、と深いため息をつき、どっと疲れを感じて席に座り込んだ。
やるせない思いを胸に窓の外を見遣ってみても、真っ暗なトンネルをひたすら進んでいるようで、あの青い抜けるような空色は当然見えない。
それで、ようやく、自分の帰るべき場所へ帰ってきたのだなと実感した。
最後に口にしたセリフのどこまでが伝わっていたのかはわからない。
平和な時間を共に過ごせば過ごすほど、想いが溢れ出しそうだったのは間違いなかった。
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