季語シリーズ⑯ 浜昼顔「北村さん! 見てください、あんなところに朝顔が!」
砂浜を歩いていると、突然九郎先生が声を上げた。
「えっ、こんなところにー?」
驚いて彼の指す方を見れば、確かに朝顔が、それも群生していた。地面に茂ったツタに薄ピンクの花々がたくさんついている。一般的なイメージの、植木鉢の支柱に絡まった朝顔とは様相が異なっていた。地面を這うような様子は、むしろかぼちゃやスイカと似ている。方々にツタは伸びていて人に管理されているようでもなく、自生しているみたいだった。
「朝顔、なのかなー? 僕の知ってるのとずいぶん違うよー」
「そうですよね。もう正午は過ぎていますし、昼顔、でしょうか」
九郎先生の言う通り、時刻は午後二時を回っていた。日もやや傾き始めていて、朝顔ならもう萎んでいる頃だろう。
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