2023/1/23 「お互いのぬいぐるみ」会計委員会室に向かうと潮江の座る定位置の机の上に見覚えのある七松パペット……ではなく、己を模した潮江パペットが鎮座していた。
「なんだコレ」
思わず潮江が手に取ると、背後からやってきた食満が答えた。
「潮江パペット」
「潮江パペットぉ?」
またなんか変なモン作りやがって……そう言いながら潮江は胡座をかいて机の前に座った。
なぜか食満も隣に座ってきたが後輩達が集まるまでは帳簿の計算を行う訳でも無いため、特に何も言わずに潮江は手に取ったパペットに視線をやった。
特徴を捉えられており、太めの眉も目の下の隈も再現されていた。
縫い目も均一で、ほつれも無く、生地もしっかりしたものを使っているのか触り心地も良い。
「小平太が暇を持て余して六年生分のパペットを作ったんだとよ、」
手にはめて潮江パペットを動かしていると横からヌッと食満の手……にはめられたパペットが近付けられた。
「その手の不細工なツリ眉のパペットは?」
「テメェはケンカ売ってんのか」
「冗談だよ」
潮江は苦笑しながら近づけられたパペットを見る。
まぁ見事に食満にそっくりなパペットだった。
ぬいぐるみなので丸っこく、可愛らしい雰囲気で作られているが眉毛はキリリと吊り上がっており、目も吊り目気味で鋭さがあった。
とはいえ、可愛げのある顔で作られたパペットだった。
「本物もこのくらい可愛げがあれば、このくらいしてやるんだけどな」
そんな事を言いながら、チューと言って潮江は食満パペットの頬に口付けさせる様に自身の手にはめたパペットの口元を押し付けた。
end.