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    _duck_yellow_

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    Sの世界にいた天使の夢主ちゃん(寧々ちゃん)が、なぜかGの世界に飛ばされて、そこにAのジェイド大佐も来ちゃったよっていうおはなし。
    はるか昔に書いた遺物。推敲は一切していないッ!!

    TOG(TOS)×TOA「…………」


    それをただ見下ろした。『落としモノ』というには大きすぎるような。
    滅多に拾うことはないし、拾わなければいけないモノで。


    「突撃!隣の晩ごはーん!」
    「っ、うるさいですよ寧々さん!今は僕が報告を」
    「閣下ー人を拾いました」
    「人の話を聞いてください!って……は?」
    「だから、拾ったの。砂漠の真ん中で」
    「元の場所に戻してきなさい!」
    「人でなしだなお前」


    砂漠のど真ん中で、人を拾いました。



    ◇ ◇ ◇



    「人でなしのヒューバートは置いといて、閣下どうしましょう?」
    「なっ!人でなしとは失礼ですね、僕はきちんと」
    「ヒューうるさい。閣下どうします?」
    「私もどちらかと言えばヒューバートに賛成だが……」
    「うっわ。閣下も見損なった」


    くっそう。この閣下あればこのヒューバートありってか!ちくしょう!

    大蒼海石が鎮座するストラタ砂漠遺跡の警護を終えた私たちの部隊がストラタ大砂漠を行軍していたときのことだ。
    部下が慌てた様子で「砂漠のただなかで意識を失っている男がいる」と報告を寄越したのだ。もうクソ暑いし警護で疲れたし面倒だしそんな男は自殺願望者と考えて放置してもいいんじゃないかと、閣下やヒューバートと同じ人でなし発言をしそうになった。しかしいかんいかん。軍の端にぶら下がる私でも一応は軍人。本当に自殺願望者であっても放ってはおけない。

    というわけでひとまず保護をし、依然として意識不明の男は医務室で横になっている。

    執務室でヒューバートの報告を受けている閣下を突撃!隣の晩ごはーん!じゃないや、突撃して指示を仰ぐ。
    恐らくは「しばらく監視だな」と命が下るのだろう。私に。……あークソ面倒、やっぱり拾うんじゃなかった。


    「では……ヒューバート、寧々。保護した男性の監視を命じる」
    「ハッ」


    ほらね。やっぱり。
    敬礼した私の横で、ヒューバートは戸惑いと驚きを乗せて閣下と私を交互に見ている。


    「ですが、僕には別の任務が……」
    「レイモンにやらせれば?」
    「…ですが、閣下」
    「ねぇ閣下?いいですよね?」
    「あぁ。迅速にレイモンに引き継ぎ、ヒューバートは監視を優先だ」


    そういうわけでヒューバートは私と任務をすることになり、ヒューバートが抱えている任務はオズウェルの従兄弟君に引き継ぐことになった。



    ◆ ◆ ◆



    あの日のことを悔やむなんて。
    やっぱり人間なんて拾うんじゃなかった。


    「大佐ぁー今日はなにか掴めましたー?」


    灼熱の太陽が燦々と降り注ぐ夏空の下、木陰で休む私はパスカルと楽しく話をしている大佐を呼び掛ける。よくもまぁ日向で話すねあの二人。陽射し痛くないのかな。
    私の声に反応して、ふとこちらを向いた大佐がパスカルになにか一言告げてこちらへと足を運ぶ。おやや?大佐が直々に足を運ぶとは珍しい。いつもは私を動かすのに。


    「これと言って情報は得られていませんが、彼女との話は楽しめますね」


    私の前で足を止めて、にこりと胡散臭い笑みを浮かべた大佐が私を見下ろす。
    ……この陰険腹黒鬼畜眼鏡、もといジェイド大佐が目で「場所を開けろ」と訴えてくる、というか命令してくる。へいへい避けますよっと。私も随分と彼に慣れたものだ。最初は警戒しまくったけれど、この胡散臭い笑みにいつまでも警戒していたら埒が明かない。

    彼は、オールドラントという世界のマルクト帝国から来たのだと言う。
    その説明を聞いた当初は疑問だらけ、むしろ疑問しかなかった。世界地図を広げてもマルクトなんて地域も国名もない。見たことも聞いたこともない名前だった。大佐が嘘を言っている様子なんて微塵もなくて、いやまぁあの状況で嘘を言えるほうがすごいけど。

    けれど、その話を最初に聞いたとき、すとんと、なにかが心に落ちた。──そうか、彼は。……彼も。

    かわいそうだと思う気持ちも、同情も、なにもなかった。
    だって、だって!!この大佐だよ?!腹黒陰険鬼畜眼鏡の!得体の知れない存在、しかし只者ではない雰囲気を肌で感じで警戒心あらわに怪訝な目で見ていたら「おや。そんな目で見られましても。存分に調べいただいて結構なんですがねぇ。まぁ私を倒せれば、の話ですが」と満面の、腹立つほどに顔がいい笑みに胡散臭さを乗せて言ったのだ。
    あかーん。勝てるわけがない。大佐は強い。絶対。
    私だって曲がりなりにも軍人だ、相手の力量くらい分かる。今のままでは絶対に勝てない。


    「頭がいい人同士の話は私にはまったく分かりませんねぇー」
    「おや。馬鹿だからこそ辿り着く真実や、馬鹿だからこそ気付く道はありますよ」
    「……そんなに馬鹿って言わないでくださいよ」


    半目になって大佐を見上げる。──あぁまた、だ。

    大佐は時折とても懐かしげな眼差しをするときがある。なにかを思い出しているような、想いを馳せているような、遠い眼差し。きっと元の世界を思い出しているんだろう。
    しかし大佐はそれを気付かれないようにと一瞬でそれを掻き消し、にっこりと笑った。胡散臭さ満載に。


    「けれど貴女はお馬鹿さんというより、阿呆のような気がしますねぇ」
    「っ…んの、クソ大佐……っ!」
    「では呼ばれているので行きますね、お馬鹿さん」


    馬鹿と阿呆どっちだよ!というか私を貶めすぎ!
    音符が飛びそうなほど軽い口調でそう言って、大佐は再びパスカルのもとへと戻る。くっそ絶対大佐には口喧嘩では勝てない……となると術勝負か?いいやでも今の私じゃ術でも勝てなそうだしな…。

    灼熱を浴びる大佐の背中を見つめる。
    出来れば、大佐には元の世界に戻ってもらいたい。いくら胡散臭くて性格が悪くて腹が立とうとも、それは本心から思う。だれも知り合いのいない世界なんて孤独なだけだ。気を許した仲間もいない、窮屈な場所。
    ジェイド大佐はそんなに繊細でもなさそうだし、のらりくらりと過ごすとは思うけれど、やはり決定的な違いはある。価値観もの相違も。それはふとしたときに唐突に突き付けられるのだ。


    「ハァ……」


    そっと溜息を吐いて、二人を眺めていたときだ。
    異変を感じてまじまじとでこぼこ姿を見つめる。

    …ん?……んんんんんんん??

    様子がおかしい。どうも、変だ。
    パスカルはなぜ杖を垂直に立てて真剣で、楽しむような表情なのか。ジェイド大佐もどうして今までにないほど真摯な面持ちなのか。
    嫌な予感が奔る。唸り声を上げながら目を細めたり、開ききって二人の様子を見つめていると──高低音が蒼穹に放たれる。

    はあああああ?!


    「贖うは地獄の業炎!」
    「業火よ、譜村の檻にて焼き尽くせ」
    「お前ら…っ!!」
    「イグニートプリズン!!」


    詠唱は違えども、同じ術。
    お前ら待てええええ!!!
    ここがどこだか分かって術をぶっ放してるのか?!

    軍の敷地内、人払いはしているけれどいつだれが来るか分からない場所で、さほど広くはない場所だ。そこで術師の、しかも高位魔術を容易に操る二人が出現方法は違っても同じ術を使えば威力は倍どころじゃない。どこまで被害が及ぶか計り知れない。
    この天才二人はなにも考えずに発動させたのかな?!
    天才と馬鹿は紙一重って本当だねぇ?!お馬鹿さん!!

    チッと盛大に舌打ちをして即座に立ち上がる。
    同時に、腰に帯びていた剣を引き抜いて水平に構える。


    「悠久の時を廻る優しき風よ、我が前に集いて裂刃と成せ!サイクロン!」


    本来は風の刃で敵を屠るものだけれど、今だけは術が発動している二人を中心にして竜巻を天高くまで伸ばす。こうすれば被害は最小限に抑えられるはずだ。
    中心にいる二人は知らん勝手に身を守れ!!

    それからほどなくして炎は消え、辺りに残ったのは身体を打つ熱風。荒れ狂う風が熱を帯び、やがて竜巻の中心にいた二人も姿を現す。二人とも各自で身を守ったらしく、火傷の痕も傷を負った様子もない。それに安堵する私を尻目に、パスカルと大佐は満足げに笑った。


    「いんやぁ思ったよりすんごい威力になっちゃったね~」
    「同じ術でも、詠唱も出現する様子も違うようですね。興味深い。根源が違うからか…?」


    こんの…!笑いごとでも興味深いことでもねーよ!!
    天才と馬鹿は紙一重だねぇ本当に!!

    どれだけの大事故に繋がるか予想出来ていない二人に、怒りを通り越して呆れを感じる。鞘へ剣を戻した私は、片手を額に添えて肺の奥底から深い溜息を吐き出した。


    その後、また術を試そうと構えた二人を、私は本気で止めたのだった。



    ◆ ◆ ◆



    その夜。天才さん一人と満天の星空のしたで語ら……ってはいない。偶然遭遇した。そこで昼間の話になり、雰囲気は痛いほど鋭いものになっていた。


    「貴女は……一体、何者なんです?」


    詠唱も術も、私たちとはまるで違う、貴女の根源も違うものなのでは?
    眉を潜めた大佐の瞳が私を射抜き、そう呟いた。剣呑な赤の双眸はひとえに真実を求めている。
    隣から降り注ぐ鋭い眼差しを受け流し、儚い光で夜を照らす月を見上げる。──駆け巡る記憶に笑みを溢す。悲しくも、暖かな記憶。


    「私は、私。今はストラタ軍の中佐で、ジェイド大佐を日々監視しています」
    「──……今『は』?」


    さすが大佐。どんな些細な言葉も聞き逃さず拾うんだな。
    私を見下ろす眼差しに鋭さが増す。雰囲気もぴりと硬くなり、私は苦笑を漏らした。そんなに警戒しなくても私は大佐に害を与えないし、そもそも関係ない場所にいたんですけどね。

    そっと溜息を吐き出し、大佐を見上げる。
    きっとどんな嘘を吐いても、上辺を取り繕っても、それらがただの偽りだと彼はすぐに気付くんだろう。隠し事をしようとも彼はきっと真実を求める。ならば。求める真実を告げよう。それになにより直感が判断した、大佐になら問題ないと。

    ──こんな私を見て、きっとあの人は笑うんだろうな。
    困ったように、でも、分かっていたと言わんばかりに。

    唐突に脳裏に浮かんだあの人の微笑みが胸を締め付ける。きゅうと苦しくなった。


    「…私も、大佐と同じです。別の世界から来たいわゆる余所者ですよ」
    「──…貴女も?」


    予想していた答えと違ったんだろう。大佐の表情が驚愕に染まる。意外な様子に思わず小さな笑い声を漏らしてしまった。そしてそっと瞼を閉じ、思い出すまでもなく浮かぶ記憶を、ぽつりぽつり、静かに紡ぐ。


    「私がいた世界は、シルヴァラントとテセアラ──世界を二つに分けられた世界」


    勇者ミトス──ユグドラシルによって切り離された世界は、世界を育むマナを搾取しあって生き長らえている。マナは世界のすべて。マナがなければ植物は枯れ、大地は死ぬ。マナの流れによって片方が繁栄し、片方が衰退するという歪んだ仕組み。そのなかで衰退世界のマナの血族は世界再生の旅を繰り返す。
    その一巡。一巡りのなかで、私に、唐突に別れが訪れた。
    世界が分かれる瞬間をともに過ごし、それ以降の長き間見守ってきた、二つの大地。そんな世界に、一巡りで出会った彼らに別れを告げる時間すら与えられず引き離され、代わりに与えられたのは孤独な世界で続く永久の時間。
    毎夜、思い出す。──大好きだった、大切だった、あの世界。どんなに歪んでいようと、私を守って、見守っていた世界だった。


    「元は一つの世界。でも二つに隔てられた。それは本来とは異なる姿。けれど、二つに分かつことで醜悪な人間の諍いを途絶えさせるしかなかった。そうしなければ、すべての源であるマナが枯渇してしまうから。──それは一部の者しか知らない真実。……そのなかでね、分かたれた二世界を統合しようとする子たちがいたの。私はそんな子たちと一緒に巡ってた。あの人に似た、あの子と。その子たちも大好きだったし、なにより、歪だっとしてもあの世界が大好きだった。だってあの人の、あの子の、世界だもの」


    鮮明に思い出せる、はるか昔。羽を宿した者達。
    透き通った、鮮やかな水色。

    つい先ほどまでのような真新しい記憶。熱に満ちた子たち。
    双刀を振るう、苛烈な赤色。

    愛しい人の子は、やはり愛しかった。




    今の私はどんな表情をしているんだろうか。
    私を見据えていた大佐が不意に腕を伸ばし、強く引っ張られたかと思えば、私は彼の腕の中にいた。
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