「ンー?どうしたんだそんな甘えた声出して。」
「お、かわいいじゃねぇか。
ん、そうかそうか、ここ、きもちーのか?」
「おい、コラ、舐めるなってくすぐったいだろ。
悪い子だな、上にのってくるなんて。」
「ははっ、イタズラすんなって。」
「……フミさん、わざとですか?」
「ん?何がだよ」
(……にやにやしてる、絶対わざとだ。)
彼の胸の上には淡いピンク色が揺れるハニーブラウンの瞳が印象的な1羽のうさぎ。
同じ劇団員の仲間から預かった期間限定の家族だが、
「フミさんってそんなに、うさぎ好きだったんですね。」
「ん、動物は基本好きだよ。
でも、こいつは、一等可愛いわ。」
これ見よがしに可愛がる声に、耳が熱をもつ。
「もう、」
「お前ほんと可愛いな。
このまま、家族になっちまうか?」
「フミさん?」
「ははっ、ヤキモチ焼いてくれてんの?」
「もう知りません!レインちゃん!
バナナあげる。おいで!」
その言葉に耳をピクリと立てると、ピョンと軽快にふみの懐から飛び出した。
「あ〜、行っちまった。」
「フミさん、にやけ過ぎです。フミさんはバナナお預けです。」