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    iceuaw

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    iceuaw

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    矢→溝
    矢が溝さんに対して拗らせてる過去捏造話。

    厚情と思遣 ドブさん、と言いながら泣きそうな表情で見下ろしてくるヤノはひどくおかしかった。勝手に追い詰められ、自己の感情に雁字搦めになっている。普段の陽気な姿が嘘のようだと思ってしまうがこの姿もヤノの一面なのだろう。
    「ひどいツラしてるな」
     ハ、と鼻で笑いながら言えばヤノは何かを言いかけて口を閉じた。血の気の失せた青褪めた顔に張りついた表情からは何を考えているのかは読み取れない。
    さて、どうするかと上に乗ったまま何も言わなくなったヤノを見上げながら思案する。
    ヤノが俺をソファに組み敷いてから数十分。何か言いたいことがあるのかと待ってやったが何も言わず、口を開いては閉じている。ヤノ自身は小柄と言えど同じ体勢のまま乗られていれば重くなってもくる。手っ取り早く退かせるにはどうするかと仕方なく考え、上に乗ったヤノの腰に手を添えた。
    ビクリ、と大袈裟に反応する姿はまるで小動物だ。
    「お前さあ」
     ジャケットの下、ベストの上から腰を撫でる。相変わらず細い腰してるよなあ、なんて場違いなことを考えながらするすると手を腹側に移動させる。ヤノは何をされているか理解できないとどこか慌てながら「ドブさん」と呼んでくるがそれには答えずに、ベストのボタンに手を掛ける。
    「俺をどうしたいわけ?」
     ボタンを一つ、外す。視線を合わせなかったヤノはいつの間にか俺のことをしっかりと見ていたが、その表情には相変わらず戸惑いが浮かんでいる。
    「俺にどうされたいわけ?」
     ベストの隙間から手を差し込みシャツ越しに腹を撫でる。触れた腹はやけに熱かったがわざわざ問い質す必要もないだろうと無視してからベストのボタンを外す作業に戻る。ヤノはと言えば時間が止まったように身体を硬直させているが、頬を赤らめ熱に浮かされた様に瞳を惑わせていた。
    「ほら、言ってみろよ」
     ネクタイを掴み顔を引き寄せ至近距離のヤノを煽りつけるが、やはり何も言おうとはしない。数分そのままの体勢で一応は待つが昔ながらの饒舌さはなりを潜めている。何を迷っているのかは知らないが言わないのであれば待つだけ無駄か。ヤノを腹の上に乗せたままソファから身を起こしヤノの身体をソファに押し倒す。痛みは無い筈だが、衝撃にヤノは声を上げくるりと目を回した。掴んだままのネクタイを引っ張りソファに沈んでいるヤノの身体を引き上げる。
    「言えるようになってから出直してこい」
     ネクタイを離しながらそう言えばヤノは逆らわずにソファに落ちた。相も変わらず絶望した表情を浮かべているので「可愛い弟分の話ならいつでも聞いてやるよ」と告げ足すとなぜか泣きそうに表情を歪めた。こいつの感情どうなってんだ。
    「おら起きろ」
    「…はい」
     のろのろと身体を起こしソファから立ち上がったヤノが俺に乱された着衣を整える。まったくガキでもあるまいし、言いたいことくらい言えるようになれよと思わない訳では無かったが口に出すのは止めた。
    「飯でも食いに行くか、ヤノ」
     少し俯いたヤノの頭に手を置きわしゃわしゃと勢い任せにかき混ぜる。「うわ」とか「やめてください」とかの声が聞こえてきたがそれでも無視をして髪をかき混ぜる。
    「ドブさん!やめてくださいよ」
     ヤノの手が俺の手を掴み、抗議の声を上げる。その手は先程触れたシャツ越しの腹と同じくらいに熱かったがその理由は分からなかった。
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