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    スズメ虫

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    道が霊基異常でショタ化したネタツリーをまとめてざっくり整えました。 2022.5.10

    #晴道
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    ##晴道

    小僧と狐の化生【概要】
    デアの晴道。霊基異常でショタ化した道をいつものノリでどついたらガチでおびえられてフルボッコにされる晴の話。 #雀虫メモ
    霊基異常の原因はノープラン。ただし完全に不随意。道は被害者。肉体だけショタに退行して霊衣のサイズはそのままのあの格好です。記憶もなく、播磨の廃寺寸前の小さな寺の身寄りのない小僧だという認識でいる。

    ***

     ふと小僧が目を覚ますと、見慣れない部屋の中にいた。見たことのない材質で、とにかくとても頑丈で清潔である。そんな部屋の、柔らかい台ので眠っていた。とにかく身を起こして見ると、さらに不可思議な事に継ぎ当てどころか繕った跡もない、身頃がとても大きい上等な着物を羽織っていた。
     何もかも分からない。分かるのは、自分が場違いな存在であるということだけ。見たこともない、理解できないようなもので溢れているという事はおそらく貴族の屋敷だろう。ここに居続けて心当たりもないのに盗人と思われるのもまずいが、裸で抜け出すのも妖しすぎる。かと言って部屋の中にあるものはどれも上等そうなものばかりで腰巻になるようなあるものはなく、この上等な着物を着たまま移動して汚すのも恐ろしい。

     ようやく意を決して、着ていた着物で一番安そうなものだけを纏って部屋から出ようとしたところで扉と思われる方の壁から何かをたたく音がした。
    「どうまん?」
     涼やかな大人の男の声だ。部屋にはだれもいない。自分をここに連れてきた犯人は見当たらない。心の臓が打ち上げられた魚の様に飛び跳ねる。

     部屋の中を見回すと部屋の壁には収納があり、咄嗟にそこに飛び込んだ。聞いたことが無い風の通る音に続き足音がした。声の主が部屋に入ってきたようだ。手を組んで見つからぬよう神仏に祈ったが、男はまるで隠れるところを見ていたように真っすぐ向かって来てためらいなく扉を開けた。悲鳴も出なかった。
    「どうまん、このようなところに隠れて何を…どうまん?」

     白い狩衣を纏った、見るからに高貴な男だった。見苦しい悲鳴など上げずいれたのは幸いだった。なんとか取り繕おうと口を開く前に男は己をつまみ上げた。
    「どうしたどうまん、随分愛らしい恰好じゃないか。どうした?またぞろ、悪趣味な悪戯でも思いついたか?…まるで本物の子供の様ではないか。おまえだとは思えぬ気配だった。だが、隠蔽に気をまわし過ぎて弱体化したか?懲りないやつめ」
     男は何か一人で納得している。小僧は刺激しないように努めて笑顔を維持した。
    「申し訳ございません」
     コツはとにかく媚びすぎないことだ。怯えは相手の嗜虐心を刺激する。それが小僧の処世術の一つだった。
    「私と出逢う前の姿だね。私に稚児趣味はないのだが…うん。おまえの稚児姿は愛らしい。食べてしまいたいくらいだ。ははは。いえ、食べませんが。勿体ないですし」
     見誤った。風のない日の湖面の様に、揺るがぬ笑みを浮かべる男は貴族ではなく、貴族の姿をした化生だ。
    「だがまあ、味見くらいはいいでしょう?」
     男はそういうと、顔を寄せ、小僧の口に吸いついた。舌を吸い出し、噛んでくる。小僧はいつ食いちぎられるかと気が気ではなかった。ひとしきり舐め終わると化生は次に耳を齧ってくる。
    「どうしたんです道満。今日は随分と大人しい。本当に食べてしまいましょうか」
     化生の手が股間に伸び、未熟な魔羅に触れる。『食べる』とはそういうことか。本能的に体が逃げようとするが、全く動かない。
    「お前にはもう1週間も逃げられ続けていますからね。子供になったからとはいえ逃がしませんよ」
     化生の術か。耳元で化生が笑う。こんなわけのわからない場所でわしは死ぬのか。

    「道満~いる?」

     のんきな女の声が部屋の外から聞こえ、化生がそちらに気を取られた。
    「ああ…またお預けですか…」
     化生は小僧を抱えたままそちらに向かおうとする。だから『わし』は縛りの術が解けた勢いのまま『ドア』に向かい、部屋から飛び出した。目の前には赤毛の娘がいた。
    「えっ誰、その姿…へっ?あっ!ちょちょちょ…どうしたの急に!」
     これは人間だ。そう思って手首を掴んで走り出す。
    「死にたくなければ走りなされ!あの部屋の中には化生がいる!」
    「え、エネミー!?嘘!」

    「化生だとは、酷いね道満」
     足を取られて顔だけは庇ったが盛大に転ぶ。化生の仕業だ。

     顔を上げればすぐそばに化生の顔がある。
    「悪い子は食べてしまおうか」
     張り飛ばそうと思ってもまた手が動かない。

    『繰り返すページのさざなみ、押し返す草のしおり』

     化生の後ろから子供の声がする。
    「ちょっナーサリー?」
    『すべての童話はお友達よ』

     気が付くとまた別の部屋にいた。部屋には赤毛の娘と、銀色の長い髪の子供がいた。赤毛の娘が言うには、わしはこの見知らぬ場所で奉公していたらしい。銀髪の娘は一番仲の良かった子供だと。わしが記憶を失っている原因はわからないと。全く不可解だが、娘が嘘を言っているとは思わなかった。「そうですか」と笑顔で答え、記憶を失った状態でお役に立つかわかりませんが精一杯奉公しますと言った。「そうだね、道満は休んでるよりも動いていたほうが記憶が早く戻るかもね」と娘は言った。
    「でも今日のところはもう休もうか。明日は案内をして、それから仕事を割り振ろうね」
    「ところで、あの化生は?」
     娘は少し困った顔をして言った。
    「確かにあの人は半分人間じゃないけど、ここで働いてる人だよ。さっきはごめんね。君が記憶を失ってるとは思わないでいつもの調子でからかったみたい」
     あれが?いつものことだと?
    「君の記憶が戻るまでなるべく近づかないようにっていってあるから、もしあの人に何かされたら私に言って。私が居なくても、他の人にも言ってあるから大丈夫だよ」
     大丈夫?何が?
    「記憶が戻るまでどこで寝ようか。私と一緒がいいかな…うーんホラー…夜中に突然の女の子が天井にぶら下がってても…大丈夫…大丈夫じゃないな」
    「わたしといっしょに寝ればいいわ。それがいいわ!ね、みちたる?」
    「うーん。みちたる君はナーサリーと同じ部屋でいいかな?知らない子と同室は緊張する?」
    「いえ、構いませぬ」
     あの化生がいないところならどこでもいい。

     翌日、赤毛の、りつか様となぁさりぃと一緒に炊事場や洗濯場などを案内され、炊事場の補助を言い渡される。狐耳と尻尾を出しっぱなしの誰の目にも明らかな化生が魚を捌いていたのは驚いたし全く話が通じないが、不思議と嫌な感じはしなかった。問題なのはあの化生だ。あの化生も食事をするらしく、昼時には食堂に大勢の人間が集まり、その中にあれがいた。こちらに興味がない振りをしているが、こちらを観察しているのがわかる。あれの視線が背中を刺すようだ。だが、怯えればあれの思う壺だろう。食堂に背を向けて与えられた雑事をこなしていると。

    「みちたる」

     台のすぐ向こうからあれがこちらを見下ろしている。
    「無視をするなんて酷いじゃないか。いや、おまえが私を避けるのも無理はないが。もう何もしないよ。お前が記憶を本当に失くしているとは思っていなかったんだ。私に詫びをさせておくれ」
     虚偽である。この化け物はわしを喰う事しか考えていない。りつか様は善い雇い主だが、これを見誤っている。これはわしを諦めてなどいない。けど、ここは島で、屋敷の外は嵐だと言う。逃げるところはあるのか。モフリ
    「そこで何をしているのだ性悪狐。ここは猫専用の戦場である。疾く去ぬがいいワン」
    「タマモキャット、私が嫌いだからと言って人の会話に割り込むのは行儀が悪いのでは?人の作法を忘れたか?」
    「口を閉じ根の国へ帰れ!猫の目もご主人の目も誤魔化されぬ。猫缶を狙う狐の本心など、半熟目玉焼きにフォーク、唐揚げにレモン。カルデアキッチン三人衆の名にかけてウェルダンな活き造りをおみせしよう!」
    「わかりました。ここは私が引きますそれではみちたる、また」

    「全く、執念深い狐だワン。やはり猫こそ至高。報酬のニンジン待ったなし!と、言うわけで猫仲間よ。キッチンに居る間はキャットの側を離れるでない。エミヤもブーティカも分かっているが、狐には猫をぶつけよ。これ、世界の真理なり。キッチン以外では絵本を手放すな。絵本は子供の一番のフレンズである故な!」
    「…わかり…ました…」
     いや、あの化生がこの狐耳を生やした女が苦手なことはわかった。言われずとも利用しよう。

     仕事が終わるとなぁさりぃが迎えに来た。子供が増えている。この屋敷の人間はみな十分な禄をもらっているようなのにふんどしのようなものだけを身に着けている白髪の子供や武士でもないのに額当てをしている子供、妙に背の高い子供。女児ばかりだ。だが仲が良かったというのは本当の様で一緒にいても気疲れすることはなかった。が、一日中妙に落ち着かなかった。

     次の日も、その次の日もどこからか視線を感じて落ち着かなかった。そして敏い小僧は気付く。その視線の主はあの化生だと。食堂では耳付きの化生の近くにいるので一番遠い席に座って大人しくしているが、そこから離れれば化生の視線を感じる。子供たちと遊んでいても。夜、床に入っていても。

    「顔色が悪いが、寝ているか?」
     白髪の外つ国の医者にそう質された。
    「はい。わしにはもったいない上等な寝床で、よう眠れます」
     笑顔でそう返した。恐ろしい化生がいても、ここは良い奉公先だ。今まで想像したこともない素晴らしい食事にありつけ、上等な寝床がある。ここを離れる気にはなれなかった。
    「ふむ…まあ慣れない環境だ。自覚がなくても気を張っているんだろう。そら、睡眠薬…よく眠れる薬を出しておこう。お大事に」

     大丈夫。化生には首輪が掛かっている。気にしなければどうということもない。そのはずだ。

     幾日も経ち、奇妙な屋敷での勤めにも慣れてきた。りつか様は何処かに出立し不在だそうだ。屋敷内で揃いの服を着た大人にすれ違う頻度が減った。昼の炊き出しの時間も過ぎ、炊事場で作業していると、草臥れた揃いの服の大人が入ってきた。椅子に座って呻いているが動く様子がない。
     炊事場を離れるのは気が進まなかったが、これは『医者』を呼んだほうがいいのだろう。廊下を小走りで進むと曲がり角で何かにぶつかる。それは見慣れた白い狩衣だった。
    「おや、みちたるじゃないか。奇遇だね」
     そういうと化生はわしを持ち上げた。
    「はなせ!」
    「つれないなあ。少しくらいいいじゃないか。私の部屋においで。お前が好きそうな菓子もあるよ」
    「わしには勤めがある!はようはなせ」
    「あの職員の男は大丈夫だよ。昼餉を食いっぱぐれて腹を空かせていただけだ。今はもう元気に食事を摂っているよ」
     やはり、この化生はわしを監視していた。そしてわしが一人になるのをいまかいまかと待っていた。
    「さあみちたる。おいで。まだ夕餉の仕事まで時間があるだろう?茶も入れてあげよう、飲んでいきなさい」
     化生は何を考えているかわからない薄い笑みを浮かべてわしの頬をなで、耳を擦る。
     その瞬間、首筋に悍ましいほど冷たいのに熱くなり、息が止まる。心の臓が死の際の獣の様に暴れだし体中の肌が泡立つ。肌の下で血潮が滾るのに、頭からは血の気が引いて瞼の裏が白くなる。小僧は確信した。このまま化生の部屋に引きずり込まれればこの幻が現実になる。わかっている。なのに、自分がどうあがいてもこの化生に勝てないということもわかるのだ。そう、今の自分には何もない。あるべきものが何ひとつ。どうあがいてもダメだったのに、これは言の葉が通じても話は通じぬ化生だ。斯様に細い子供の腕、真っ新で無知な雛では到底敵わぬ。無駄だ。なにもかも。何もかもが届かない。わしはこの男をどうしても、

    「なにをしてるの狐さん」

    「おや、ナーサリーライム」
    「みちたるを離して」
    「そんなに怒らなくてもいいじゃないか。みちたるをお茶に誘っていただけだよ。そうだ、君もどうだい?」
    「みちたるを離しなさい」
    「いやだよ。また君たちが独占するじゃないか」

     なぁさりぃは見たことがないほど眉を吊り上げて化生を睨みつけている。これはよくない。
    「なぁさりぃ、」
     わしのことは良いから、と言いたかったが声は続けられなかった。いつの間にかなぁさりぃの髪はほどけ、本を手にして服が変わっている。そして、少女の背後には天井を突き破ろうかという鬼のような化生が立っていた。

    「悪い子にはお仕置きよ!狐さんをぺしゃんこにして!ジャバウォック!」
     なにがなんだかわからないが、わしは解放され、化生は鬼と組みあっている。
    「逃げましょう、みちたる!」

     なぁさりぃに手を引かれて廊下を走る。けれど、逃げるといってもどこに?
     なぁさりぃには考えがあるようで、わしが行ったことのない場所をどんどん進んでいく。途中で合流した子供たちも引き連れて壁一面が光っている部屋についた。なぁさりぃは迷いのない手つきで壁を押し、部屋の奥にある箱に手を当てた。目の前が白く焼け、気が付くとそこは、草原だった。
    「は?」
     先ほどまで屋敷の中だったはず。驚きはそれで終わらなかった。
    『すべての童話は、お友達よ!』
     なぁさりぃがそう言い終わった途端、色の洪水が起こる。いつも遊んでいる人形と似たようなものが何もない空から生まれた。だが、大きさは人形と言えるようなものではない。
     たしかにいつもの同じような大きさのものもあるが、自分たちと同じ背丈、大人の武者のような背丈のもの、それどころか住んでいた寺より大きいのではないかと思われる獣の人形もいて、その上それがすべて動いている。動いているものに気を取られたが、景色も変わっている。見たこともない意匠の池から水が吹き上がり、周りは奇妙に整った形をした木々かわしたちを囲んでいる。惚けて口を開けているわしと違って他の子供たちは素直に驚き、喜んでいる。

    「わぁ、すごいですナーサリー!あれもこれもわたしたちが欲しかったお人形さんばかりです!あの生け垣は迷路ですか?探検し甲斐がありますね。あっちに見えるのはお城ですか?ピラミッドも刺さっていないしハロウィンのお城より素敵です!…素敵ですがどうしていきなりこんなことを?マスターや所長さんの許可は取ってあるんですか?」
    「もちろんシミュレーターを使うとは言ってないわ」
    「なーんだ使うといってない…言ってないんですか!?」

     何もわからないが、りりーの言うことの方が普通だということはわかる。
    「仕方ないよ、リリィ。相手はあのせーめーだもん」
    「ジャックの言う通りよ。真正面から勝負したらみちたるを守れないもの。それに、マスターにはちゃんと『みちたるを守ってね』って言われてるもの。説明すればわかってくれるわ」
    「なるほど…納得しました。…ナーサリー、シミュレーターを貸し切る正当性はわかりましたが、この固有血界を展開維持するリソースはどこから?シミュレーターの設定ではないですよね?」
    「それは、ちょうちょのおじ様からお借りしたのよ」
    「新茶さんですかなるほ…なぜ新茶さんが持ってるんですか?」
    「さあ?」
    「…悪事の予兆を見過ごすのはサンタらしくありませんが、まあ今は優先するべきことがあるので…」
     全員の顔がわしに向く。
    「さあ、みちたる、皆で一緒に遊びましょ?ここならあの狐さんも、狐さんの目も入ってこないわ!」
    「でもなぁさりぃ、わしは仕事が…」
    「そのお仕事を邪魔したのは狐さんだわ。その分狐さんがみちたるの代わりに働くから大丈夫よ」
    「あの化生、水仕事ができるので?」
    「できなくても他のことで埋め合わせるはずよ。さぁ、遊びましょう?私たちはみちたるとずーっと遊びたかったのに、あの狐さんのせいでみちたるは心から楽しめてなかったでしょう?」
     なぁさりぃのいう事は、全てその通りだった。
    「遊びましょう遊びましょう!子供は遊ぶのが仕事なんだから!」

    ***

    「それで、これはどういう事態なのかな~?申し開きはあるかい?晴明」
    「特にいうことはありません。見た通りの事態なので」
    「君が蘆屋リリィを手籠めにしようとして、それを止めようとしたナーサリーがシミュレーターを占拠したと」
    「手籠めなどとは人聞きの悪い、お茶に誘っただけです」
    「子供を逃げられないように抱き上げて拘束して部屋に連れ込もうとするのは傍から見れば完全に犯罪者だからね?嫌がっていればなおのこと、ナーサリーの英霊としての性質を考えれば守ろうとするのは同然の流れだ。立香ちゃんはまだレイシフト先だから頭が痛いよ」

    ***

    「馬鹿め。あの陰陽師は事実を暴くことに長けているが、それだけだ。あのアルターエゴはリリィ化した。記憶もサーヴァントとしての自覚もない。これが事実だが本質はそこではない。あれが、身寄りのない孤児であるという自認であることだ。ナーサリーライムが猫とも道満満とも呼ばず、『みちたる』と幼名で呼ぶのがその証拠。子供かどうかに関して、あれ以上の目利きはいない。つまり、あれと安倍晴明は何の関わりもない、正真証明、赤の他人だ」

    ***

    「おなか、すいた、な」
    「もう少ししたらおやつを取りに行ったリリィが帰ってくるわ、アステリオス。慌ててたからお茶の準備ができなかったのは失敗だったわ」
    「その、申し訳ありませぬ…」
    「謝らないでみちたる。悪いのはぜーーーんぶあの狐さん!マスターが帰ってきたら怒ってもらうんだから!」
    「どうしてなぁさりぃは、わしにこんなに良くしてくれるんです?あの化生に盾突いてまで」
    「貴方は私の後輩でだし、今の貴方は子供だから当然よ」
    「今?」
    「みちたるはなんにもしなくていいのよ。いえ、それはちょっと違うわ…私と一緒に遊んでくれるだけでいいの。私と一緒にいっぱい遊んで、一緒に笑って、一緒に砂糖菓子を食べましょう。私はそれだけで楽しくて嬉しいの。いずれ私を忘れてしまっても。今の私にはわたしがいるから」
     いつもの様ににこにこと笑うなぁさりぃの言うことは、いつもの通りよくわからなかった。わかるのは、彼女はやりたいことをしているだけで何の負担も感じていないということだ。

    「あ、りりぃだ!」
    「ただいま戻りました~。乾きものばかりですけどお菓子をたくさん持ってきましたよ」
     腕に大きな袋を抱えたリリィをナーサリーが出迎える。同時に、部屋中から金属がぶつかり合う音がする。
    「ナーサリー何か…」
     びょう、と何かが飛ぶ音がする気付くとリリィの足元に槍が刺さっているナーサリーが怒っていることに漸く気付いた。何故という前にそれは正体を現した。
    「おや。何故分かったんです?」
     リリィの口から化生の声が出てくる。ナーサリーはソレに構わず、見慣れない鎧達が恐らくナーサリーの指示通りにリリィの姿をしたアレを槍で串刺しにした。
     それはニヤリと笑むと紙片に化けたあと燃え消えた。
    「なんて…なんて失礼な人なの!」
    「ただいま戻…ったんですけど何かあったんですか?」
     ナーサリーは今度は何も言わず、今度こそ本物のリリィのようだった。

    「ぜったいぜったい、もう誰にも邪魔させないんだから!」

    ***

    「わー…なんということでしょう。匠の技でシミュレーター内にメルヘンとニチ〇サが融合した豪邸が…」
    「ごめんりつかちゃん…特異点から帰って早々…まさかあのバカ狐が火に油まで注ぐなんて…」
    「ううん…私も同罪だよ…まさか晴明さんが道満が本気で怯えてる事を理解してないなんて…」
    「お言葉ですがマスター、道満の事を舐め過ぎでは無いですか?あれは幼くてもサーヴァント、幼くても私と向こうを張った術師ですよ?私の事を本気で化生だと認識していてもそれで怯む様な柔な男ではありません。いえ、あの霊基は性別不明ですが」

    「ううん。そう思うよ。どんなに幼くても、あの子は道満だから。貴方に勝てなくても、貴方に負けたままでいるなんてありえない。でもね、大小はあっても恐怖心はなくならないよ」
     心から道満の実力を信じている故の盲目さに頭が痛くなるのを堪え、彼の弟子に及ぶわけもない拙い言葉を続ける。
    「私が勇気を出せるのは、皆がいるから。仲間がいるから。安心できる帰る場所があるから。…心の支えがあるから。そういうものが今のあの道満にはないんだよ、心の支えになる記憶も帰る場所も。何もないのに死地に居るのがどんなに怖いことか…。私にはいつもみんながいるから。いつもまっすぐ立てる。でも、今の道満にはできないんだよ。何もないから。そんな状態の人を怖がらせるのは悪いことだよ。元が強い人だからってそんな酷いことをしていい理由にはならない。…というわけで、私はこの分からず屋はとりあえず謹慎室行きが妥当だと思います」

    「もちろんだとも!もう手配済みさ☆対陰陽師捕獲部隊、いらっしゃ~い☆」
    「ぶふぉあお前本当に馬鹿だなあ晴明!」
    「晴明様…はわわわ…」
    「なんていうか自分以上のがいると自分って案外捨てたものじゃないって自信が持てるなあ錯覚だけど ショタコンの捕獲とか何ひとつテンションが上がらぬのでつが」
     がやがやと入って来たサーヴァント達に拘束され扱き下ろされながら、元凶は謹慎室に叩きこまれた。
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