ぴたごらとらぶるでベッドインするカルデア時空伊正「では貴殿は詫びに私を媛のように抱けるのか!?」
そんな台詞が口から飛び出た瞬間、既に後悔していた。いやもっとその前、先の任務であのような災難があった時点でもう最悪の底を突き抜けていた。そこまで行ったら私と言う愚か者はもう、どうにもこうにも物事の時勢を立て直すことが出来ぬのだ。
その結果がこれだ。意を決して目を開け数日前の失言の結果と向き合おうとした瞬間、すぐ閉じてしまった。衒いのない意味で浅からぬ縁のある人物が、ひたすらに個人的な意味で浅からぬ想いを持つ人物が、裸で、自室の自身の寝具の中に居る現実に耐えられなかった。更には自分まで裸で、気のせいだったと思いこめる状況ではなく、目を閉じて全てを拒絶する事しかできない。そんなものは紙程の守りもないのに。
「正雪?目が覚めたか」
ああ、事務作業から逃げて幼児の様に駄々を捏ねるマスターを二度と笑えない。
***
「で、それから正雪先生に全く会えないと」
「ああ」
事態を軽く見ず、真剣に深刻に私に相談を持ち掛けてきた色男の表情は、焦燥が混じりキリッとしつつも憂いを帯びており、豪快な海鮮丼のどんぶりからイクラが零れ落ちるが如き色気が公害レベルの、大変なイケメンだった。その相談内容のCBC(カルデアボケナスコレクション)に反して。
「いやまあ、誰しも苦手分野があるのは仕方ない…仕方ないんだけどね~」
***
「貴殿を困らせるだけなのは分かっていた。だから言うつもりはなかったんだ」
眉を下げて正雪は微笑んだ。
「だから最初に言った通り、これは私の問題なんだ」
つまりは、宮本伊織は由井正雪の隠したかったことを暴いただけに終わった。
「こんな事になるなら最初から素直に…いやどうせ口が裂けても言えなかったな」
「その…誠に、申し訳なく…」
「良いんだ。貴殿がそう云う人物だと分かっていた。懐が広い様でいて、これと決めたことは絶対に曲がらない」
寂しそうな目だ。咄嗟に、彼女に手を伸ばしたくなった。けれど。
「だが、それは貴殿の誠実さ故だ。此度は、私と心の底から、真っ直ぐに向き合おうとした結果だ。まぁその方法が…アレ、で、伊織殿がカルデアの女性陣に襤褸布の如く品評される所以なのだが………いやその、罵りたいわけではなく!」
ぱっと、新雪に鮮やかな花びらが零れるように。貌に、鮮やかにその色が載る。
「私は、貴方のその様なところが好きなのだ。だから、この件に関してはじめから勝ちの目はなかったのだ」
己には決して理解できないその色[表情]。一生…いや既に死人だが、一生理解できるとは思えない、それ。だがカチリ、と。目の前の女性と、知識として知るのみのそれが一致した。
「………あ、あれ…?ここまで…いう必要はなかった、ので、は…?…は!いやその…わ、私が言いたかったことは以上、だ!だからこの件はこれで終いだ!伊織殿それでよいだろう?よいな?では私はこれで…!これからもカルデアの一般的な同胞としてよろしく頼む!では!」
そう言って立ち去ろうとする彼女の腕を掴んで引き留める。ぴしり、と音がしそうなほど硬直した彼女に「正雪」と声を掛け、面を上げる様促す。「あ、ああ…」彼女はよろよろと親猫に捕まって観念した仔猫の様に悲壮な様子で顔を上げた。
「何と言ったらいいか…あまりにもなにもかもが意外すぎて頭が追いついてないのだが…」