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    mzonpixiv

    ツイッター:@mzonpixiv
    ダイ大再アニメ化でSS二次創作をしています。
    普段は支部をメインに投稿&徘徊。
    旧アニ、原作履修済み。
    ネタバレは考慮していません。
    最推しはラーハルト。
    書く→ブロマンス~R18。
    ヒュンラー、ダイ&ラー、ダイレオ、アバフロ
    読む→BLNL左右リバ不問の超雑食
    地雷→自害、堕胎、虐待、バッドエンド
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    カツヲっさん様が書かれたラーさん in スーツを拝見して軽率に書かせていただきました🙇‍♂️
    「謎時空」「現パロ」「モデルパロ」のヒュンラーです。

    ##ヒュンラー

    ラーハルトが操作しているスマホの画面をちら、と覗けば彼が被写体となった写真のサムネイルばかりが並んでいた。それのどれもがいかにも「撮影用」といった作り笑いを浮かべている。普段から見慣れたパートナーの顔とはいえ、これだけ山のように大量にあると流石に可笑しな気分になってくる。

    そんなラーハルトとオレは休憩用の控え室でいつもながら隣同士に座っていた。自分はとうに空腹を満たしていたが、彼の方はろくに食べずにスマホを操作し続けている。長時間の撮影の合間にようやく一息付けたというのに、生真面目な彼はさっき撮られたばかりの写真データを念入りにチェックしているのだ。
    オレはと言えば、撮影用に着せられたスーツがまだ着苦しい。せめてジャケットだけでも、とさっさと脱げば少しは身軽になっていた。一方ラーハルトはさすが着慣れているようで、撮影時そのままの格好であっても苦ではないらしい。上下黒のスーツに中は白シャツ、そしてやや濃い茶色のネクタイ。当たり前だがサムネイルに映る彼と全く同じ服装だ。まぁオレも同じく似た恰好をしていたが。

    「今度のオーディション用はどれにしようか。」

    「オレはこれがいいと思う。」

    ふいに問われ、こちら側に傾けられた液晶画面の画像の一つを指差した。そこにはいかにも「好青年」というか、人当たりが良さそうに上手く微笑った彼の顔が映し出されている。

    「...貴様、適当に答えてないか?」

    「...正直なところ。どれも同じような顔ばかりでオレには分からん。」

    「確かにな。...」

    顎に手を当て、ラーハルトがうむ、と頷いた。

    「思うに今日のカメラマンがいまいちなんだ。どうも気分が乗り切れん。」

    「そうだな、指示という指示もほぼ無かったし...。ただ撮り続けているだけと云った感じだな。」

    「オレ達に任せてくれたと言えなくもないが、せめて目線やポージングぐらいの指示があっても良いものなのに。」

    「そう言えばオレのも見てくれないか?我ながらやはり同じようなものばかりで。」

    言いながらラーハルトへと自分のスマホを差し出した。彼は受け取り画面をスクロールしていくが、何故だかその眉根が不満そうに寄っていく。

    「...相変わらず表情が固い。ほとんど睨みつけているじゃないか?」

    呆れたように呟かれ、再度画面に目を落とす。言われてみると全くもってその通りで、どれも不機嫌そうにすら見える面構えの自分の顔がいくつも並んでいた。

    「...やっぱりか。お前みたいに上手く笑えずとも、せめて表情をもう少しは柔らかくしたかったが...どうにも緊張して。」

    そう苦い思いとともに吐露すれば、

    「場数が足りんのは確かだが...まぁこれから徐々に慣れていければいいだろう。」

    と、一応は労いの声をかけてはくれたのだが。

    「にしても睨む目線がきつすぎる。今にも人を殺しそうな表情だな。」

    そう言って、ラーハルトはぷは、と揶揄するような笑いを零していた。

    「...仕方ないだろう?笑顔を作ったことなどろくに無いんだ。お前と違ってな。」

    少しばかりむっとして口を尖らせはしたものの、ラーハルトは変わらずくく、と喉を鳴らして笑っていた。そしてそのままオレのスマホをスクロールし続けていたのだが、

    「...笑顔を作ったことがない、だと?」

    そう言って、一枚の画像をオレの方へと見せてきた。

    「...あ、......」

    それは、先週彼とプライベートで撮った一枚だった。

    あの日は確か...久しぶりに二人揃っての休日だった。たまには外で食事をしようなどと彼が言いだして、オレは少々浮かれ気分で外に出た。

    すると、ちらちらと綿雪が空から舞っていた。ここらでは滅多に雪など見られないものだから、思わず写真を撮ろうとスマホを空に上向けた。その時ラーハルトが背後から不意に抱きすくめてきて、それからスマホを持った手を無理矢理にこちらへ向けていた。そうして思いがけずに二人でいわゆる「自撮り」というものをした時のものだった。

    その写真にはなんとも腑抜けて笑う自分の顔が映っていた。対して彼の方はと言えば、背後からオレの紅い頬に唇を寄せる瞬間が映っている。

    「...いい顔をしているじゃないか?」

    「...揶揄ってくれるな、不意打ちだったくせに。」

    「さっきのものとは大違いだな。」

    「よしてくれないか...、こんな顔、我ながら見ても情けない。」

    「そうか?少なくともオレは好きなんだが。」

    そう言ってラーハルトは愉しそうに微笑みながら、手早く何やら操作している。

    「...お前、人のもので勝手に何を、」

    「こんな写真を独り占めするのは解せんのでな。」

    言い終わらぬ内にラーハルトのスマホが受信音を鳴らしていた。

    「悪いが頂いたぞ。」

    ニヤリ、と笑って自分のスマホを見せてくる。

    「...そんなことをせずとも送ってやるというのに。」

    「ハッ、貴様のことだから後で送れと言っても、どうせうっかり忘れるのだろう?」

    そんなことを言いながらも彼の調子は至って軽口で、また画面に見なおりその写真を眺めている。その表情は彼の方こそ珍しく、どこか嬉しそうに緩んでいた。

    自分の腑抜けた顔の写真をじっくり眺められるなど正直なところ居心地悪いものだが、そんな彼の表情を見られたのなら「まぁいいか」とも思ってしまっている。

    「...お前が撮ってくれたらな。」

    「ん?」

    「お前に撮られるなら、緊張せずにいられるかも。」

    ついそう口にした。自分で言っておきながら少々気恥ずかしい。

    「...ほぉ?」

    相槌を返すラーハルトにしげしげと見据えられ、オレの目線は逃げ場が無くなった。

    「だったら、今ここで撮ってみるか?」

    そう言いながら、ラーハルトは既にスマホのカメラを起動させている。オレはますます逃げ場が無くなった。

    ーーー

    「オレは、その...もともと写真映りが悪い。いつも硬い雰囲気になりがちと言うか。」

    「そんなもの最初から分かっている。」

    「でもお前に対してなら少しはリラックスできると思う。」

    「オレの腕がどうとかは関係なく?」

    「そう、...だな。」

    口籠りながらそう言えば、ラーハルトはふ、と笑ってスマホのカメラを向けてくる。その表情はなぜか妙に楽しそうだ。

    「座ったままでいい。姿勢もそのままで。」

    言われるがままにしていれば、ぱしゃり、とシャッター音がした。

    「少し顎を上げてみろ。」

    と、またパシャリ。

    「...次は少し目線を下に。」

    また言われるがまま目線を下げれば、次々シャッターを切る音が鳴る。

    「今度は...そうだな、こっちは見なくていい。適当に下を向いていろ。」

    そしてまたパシャパシャと数回音がした。

    ほんの数分、試しに撮ったのは十数枚。撮り終えたラーハルトは画面をオレに見せてきた。すると、そこには自分とは思えないような姿が映っている。

    最初に撮られたものは至って普通の表情だ。だが、どこかいわゆる「キメ顔」のようにもなっている。そして次に言われた通りに顎を上げた写真は、上手い具合にやや見下ろすようになっていて、少し挑発的な顔になっていた。
    それから俯いてから撮られたものは、打って変わってどこか物憂げな雰囲気ながら、少し微笑っているようにも見える。そんななんとも言えない表情をこのオレ自身が浮かべていた。

    たった数分。それだけで、こうまで違う自分の瞬間を彼は見事に捉えていた。

    「...すごいな、お前。カメラマンとしても十分やっていけるんじゃないか?」

    「やめろ、オレには向いていない。」

    素直に賞賛を送ったつもりだったが、ラーハルトは即座に否定し苦笑した。

    「...貴様だからだ。こんな風に撮れるのは。」

    そしてぼそり、と一言付け加えられた。その言葉の意に少々照れくさい思いがする。

    「...だったらせっかくだしもう少し撮ってもらいたい。」

    我ながらそんなことを言うなど多少気が引ける思いもした。だが、彼によってどこまで表情を引き出されるのか試してみたかった。

    「...そうか、なら、」

    と、彼はこちら側へずい、と身を乗り出して、

    「...少しばかり、趣向を変えてみるか?」

    言いながら、こちらの返事を待たずに首元のネクタイに指をかけてきた。

    「...ラーハルト?何を...」

    「まぁ任せろ。」

    言うや否や、ラーハルトはそのままオレの太腿の上を跨いでそのままどっかりと座り込む。それから有無を言わさず指をかけたままのネクタイの結び目をぐいと一気に引き下ろした。続けてシャツのボタンも器用に手早く外されて、解かれたボタンは既に二つ、それからさらにもう一つ。

    「...これ、は、さすがにやり過ぎじゃないか?...」

    「この程度で恥ずかしがってどうする?」

    そうラーハルトは口の端を僅かに上げて、襟の中へと手を入れてきた。鎖骨部分に掌を当てがって、それからぐい、と一気に襟元を開けさせる。

    「...貴様は少々色気というものが足りん。人目に魅せて惹きつけるものが。」

    そう囁くように言いながら、顕わになったところから胸板へとシャツの下に手を差し入れて、そのまま肌の表面を撫ぜてくる。

    「...こうまでしなければならないのかな。」

    「仕方あるまい?そうでなければ貴様の仏頂面は崩れんだろう?」

    ...普段、仏頂面なのはそっちだろうと言い返そうとしたが、

    「...ん...ッ...」

    こちらが言葉を吐く前に、すかさず首筋に唇を寄せられさらに軽く喰まれていた。

    「...ラー、ハルト、こんなところ、で......」

    突然の流れについて行けず、ただ急激に戸惑いだけが募っていた。そんなオレをさも気にせずに、ラーハルトは喰んだ箇所にぬる、と舌まで這わせてくる。

    「...ァッ!...」

    不甲斐なくもそんな声が出て、思わずきゅ、と目を瞑る。

    すると、

    ーーパシャリ

    ...まさか、と思った。

    「...お前...っ...!」

    「...あぁすまん。貴様があまりにいい顔をしていたものでな。」

    目を開ければ口端を吊り上げ見下ろしてくる彼と目が合った。

    それはあまりに唐突でいくら何でも不意打ちすぎたものだから、思わずカッとなり対面に座位する彼の体を引き寄せて、

    「......んッ......!」

    強引と分かりながらも少し歪んだその唇を塞いでいた。

    「...ぁ...っ...」

    重なった唇の隙間から漏れる吐息も飲み込んで、スマホを持った手の首を摑まえた。

    ...にもかかわらず、また、パシャリ、とシャッターが切れる音がした。

    「...っ、おい、さすがに控えてくれないか。...」

    顔を引き剝がして精一杯睨むように彼を見た。だが向こうはそれをものともせぬとでもいうかのように、やはりニヤリと笑い返してくる。

    「いい写真を撮ってやったんだが?なんならもっと試してみるか?」

    そんな挑発的な言葉を吐いてくる。
    全く人を煽るにもほどがある。

    ...だがオレも引き下がるつもりはない。

    「...そうだな。ぜひ試してみたいものだ。」

    言い返して掴んだままの手首ごと、彼の体を後方のテーブルに押し倒した。

    「...こうすればお前も一緒に映るしかないが。それでも撮ってみるか?」

    努めて低い声で告げてみるものの、

    「...あぁ、それも悪くない。」

    また口端を上げ、押し倒されながらも身を乗り出して躊躇もせずにこちらの唇に喰らいついてくる。

    ...結局、流されたのは自分の方だ。

    ならば、この限られた時間でせいぜいお前の「いい顔」とやらも見せてもらおうか。
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