深爪「ブラッドショーって深爪ね」
ガヤガヤとする食堂で、銀のトレーを掴み座る席の向かい、フォーク片手にフェニックスはそう言った。
「爪柔くてさ、すぐ二枚爪になるんだよ」
「あ~、私と逆ね。私硬くて割れるの」
フォークを掴む手を開き見せてくる彼女の手は、俺よりも少し長い爪が切り揃えられていた。
掴むスプーンでチリコンカンを掬い、口に運びながら彼女の指と自分の指を見比べる。フェニックスの爪は、俺よりは長いが女性にしては短く少し雑に切られていた。細く長い指はそのまま再度フォークを掴み、チキンを突き刺し口へと運ぶ。何というか、彼女はその辺の男のより男勝りで、いい意味で格好いいと思う。
「始めさ、随分大事な恋人がいるんだと思ってた」
2059