テオドールへテオドールへ
ごめんね、手紙なんか書いたことなくてさ。
明日、卒業するあんたの姿見たらちゃんと全部話せる気がしないからこうやって書くことにしたんだ。
手紙って形であってるか分からないし、拙いもんで悪いけど最後まで見ておくれ。
あんたと初めて会ったのは結構前だったかな?あたしは眩しいものが好きだから、あんたもキラキラしててつい声をかけちゃったんだっけね。
そしたらあんたの方が凄い勢いであたしのこと聞いてくれて、こっちが驚いたよ。
そういえば月夜に会った時もすごく驚いたな。テオドールの髪が真っ青になってて!いつもと違うけどそれは綺麗で引き寄せられたよ。あんたは色々心配してたけど、そんなのどうでもいいって思えるくらい感動してたんだ。
あんたのその能力がなかったら、今のあたしはなかったね。
常闇の国からお迎えが来た時。
今思えばそんなに焦らなくても良かったのかもしれなかったけど、その時は余裕がなかったんだね。コマにギフトまで使って、必死に逃げようとしてた。ギフトを使った魔力の暴走は、あんたが魔力を吸い取って収めてくれたけど、コマには本当に悪いことをしたよ。
たくさん迷惑かけたね。でもあんたは何も言わないあたしのことを許して、信じてくれた。
一緒にサンドイッチを食べてくれた。
嬉しかったけど、自分が情けなくて…
あんたの優しさをまだ正面から受け止められなかったな。
誰かに自分のことを全部話すのがすごく怖かったんだ。それで失望されたり、巻き込んだりしちゃうんじゃないかって。
自分のことしか考えてなかった。
よくよく考えれば国の為に命を差し出すか、自分が可愛いから国を捨てるなんて選択どうにかしてたよ。でもあの時テオドールがあたしのことを受け止めてくれて「他の道がある」って言ってくれるまで、あたしに選択の余地なんてないってそう思い込んでた。
一緒に常闇の国まで来てくれた時は嬉しかった。
自分の役割に向き合うのは凄く…覚悟がいったけど、テオドールがいてくれたから思ったよりは怖くなかったよ。
姫として国民と向き合ってみて、あたしも皆も望むものは同じだと気がつかされた。テオドールを通して分けてもらった魔力がすごく暖かかった。
神木に魔力を注ぐ時、取り込まれそうになりながら必死に祈ったよ。テオドールみたいにちゃんとした祈りじゃなかったけど、「どうか、これからもこの谷を守って。」って。自分の体丸ごとはあげられないけどってワガママも付いてたから祈りじゃなくてお願いだったかもね。
でもテオドールの顔を見て、生きたいって思った時、少しだけ見えた気がしたんだ。
白い空間とそこに佇む初代様を
悲しそうに笑ってたな、
「しょうがないわね」って顔でもあった気がする。
テオドールと国民のみんなとあたしのギフト、全部の魔力を合わせて30年。神木の寿命が伸びたんだって。
今までは魔女1人取り込んでたのが、みんなの力でこうなった。凄いことだよね。
この間にやることは沢山ある。
常闇の国はやっぱり住めるところじゃないから、移動しなくちゃいけないし。それには私も皆も陽にあたって大丈夫なように呪いを解いてかなきゃいけない。次に住むところも探さなきゃいけないからやることが沢山で、もうてんてこまいさ!
でもいつか、もっと笑顔に溢れる私たちの国を…白雫の国をテオドールにも見て欲しいんだ。
もらったものを色んな形で沢山返したい。
時間はきっとかかるだろうね、でも頑張るよ。
だから絶対いつか、また白雫の国に来ておくれ。
姫の権限で招待するよ!
だから、また会える日まで元気で
その時を楽しみにしてる
心から
ナリッシュより