今どきのアースティア1 壁に押し付けてドンってするやつ
女性同士の話、というものはあまりよくわからない。けれど、それが「楽しい」ものであるということは彼女たちの表情を見てわかるようにはなってきた。
最近できた甘味と紅茶を提供する「カフェ」とかいう場所に連れてこられて、1時間が過ぎただろうか。自分と横にいるエルフの青年・・・ちょうど自分たちの目の前で会話を繰り広げているエルフの女性・・・カッツェの兄は話が盛り上がるパッフィーと彼女をぼんやりと見つめていた。話に加われるわけもないので口にすっかりぬるくなってしまった紅茶を付けたまま。
「でな、最近な、「壁ドン」いうのが流行っとってな。」
「まぁ。壁・・ドン?壁をドカーンとするのですか?」
「ちゃうちゃう。壁にドン、って相手を押し付けるようにしてな、っていうやつやねん。世のお嬢さんは偉いそれにときめくらしいで。」
「まあ。」
「ヒッテル…わかるか?」
「俺がわかると思うか?」
「そうだな・・・。」
「男前さんに一回でいいからやられてみたいわぁ。壁に、どーん。」
「そういえば港町で一度・・・居場所を聞き出すために剣を突き付けて似たようなことをした記憶があるな。あれか?」
「・・・それで、あのじゃじゃ馬はいうことを聞いたのか?」
「あぁ。一応は。」
「ガルデン。そろそろあいつを黙らせたい。いい加減に五月蠅く思えてきた。」
「いいのか?」
「構わない。やってくれ。」
はぁ、と一息ついて、席を立ちあがり、重い足取りでカッツェに近づいていく。
「なんやなんや?いきなり・・・?」
「カッツェ。顔を貸せ。そこに立っていろ。」
「なんやの?」
「壁を背に来るようにして。剣・・・は流石に店内ではまずいから左手で…目がよく見えるようにした方がいいのか…」
「へ?兜とってどないする気‥‥ひゃ!!顔!ちかい!!!」
どん。
「これで満足か?」
「ふにゃあああああああ・・・・」
「カッツェ?カッツェ??大丈夫ですか?」
「あ、あかん・・・・耳元で・・・あかん・・・それはあかんで…」
「やっと静かになったか。すまない。手間を取らせた。」
「もう二度とやらん。」
「あぁ。二度目はない。お前を撃つ。」
「・・・肝に銘じておこう。」